セッション情報 シンポジウム19(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

GERDにおける内視鏡診療の進歩

タイトル 内S19-2:

重症型逆流性食道炎の臨床的検討

演者 北川 智之(東邦大医療センター大橋病院・消化器内科)
共同演者 鈴木 武志(東邦大医療センター大橋病院・消化器内科), 前谷 容(東邦大医療センター大橋病院・消化器内科)
抄録 【背景】現在本邦では人口高齢化に伴い,逆流性食道炎の有病率は増加し,さらに重症例の増加が指摘される.【目的】高齢者における重症型逆流性食道炎の臨床的特徴を明らかにする.【対象と方法】2008年1月から2012年12月までに当院で施行した上部消化管内視鏡検査でロサンゼルス分類に基づいて逆流性食道炎Grade Dと診断された68例を対象とした.75歳以上の後期高齢者を高齢者群,75歳未満を非高齢者群として比較検討した.検討項目は,性別,内視鏡施行時の臨床症状,ヘルニアの有無,萎縮性胃炎の有無,内服薬(NSAID,抗血小板薬,抗凝固薬,カルシウム拮抗薬)とした.【結果】高齢者群は39例,男女比は13:26,非高齢者群は29例,男女比は24:5で重症型逆流性食道炎は高齢女性で有意に多かった(p<0.0001).内視鏡施行時の臨床症状では,自覚症状を認めなかった例が,高齢者群で46.6%(18/39),非高齢者群で27.6%(8/29)であり,有意差は認めなかったが,高齢者群で多い傾向にあった.さらに,消化管出血症状を認めた例は,高齢者群で35.9%(14/39),非高齢者群で20.7%(6/29)であり,高齢者群で多い傾向にあった.ヘルニアの有無では高齢者群64.1%(25/39),非高齢者群44.8%(13/29)で有意差は認めなかったが,高齢者で多い傾向にあった.萎縮性胃炎の有無では高齢者群82.1%(32/39),非高齢者群79.3%(23/29)で有意差は認めなかった.また,内服薬では,NSAID(12.8%:3.4%),抗血小板薬(10.3%:10.3%),抗凝固薬(12.8%:3.4%),カルシウム拮抗薬(38.5%:17.2%),PPI(20.5%:20.7%)でそれぞれ有意差は認めなかったが,カルシウム拮抗薬の内服は高齢者群で多い傾向にあった(p=0.0575).【結論】後期高齢者では重症型の逆流性食道炎でも自覚症状を有さない場合も多く,そのため,消化管出血を契機に診断される場合もある.後期高齢者では自覚症状がなくても内視鏡検査で逆流性食道炎の有無の確認が推奨されると思われる.
索引用語 逆流性食道炎, 後期高齢者