セッション情報 シンポジウム19(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

GERDにおける内視鏡診療の進歩

タイトル 消S19-4:

当院の検診で指摘された食道好酸球増多(EE)症例の検討

演者 関 英幸(KKR札幌医療センター・消化器科)
共同演者 鈴木 潤一(KKR札幌医療センター・消化器科), 松薗 絵美(KKR札幌医療センター・消化器科)
抄録 【目的】EEは,食道生検で好酸球浸潤を認める状態であり,原因疾患の多くは胃食道逆流症とされているが,好酸球性食道炎,好酸球性胃腸炎,膠原病,感染症等様々な疾患でも認められる.近年嚥下困難 ,胸焼け,胸痛などの症状をきたし,食道粘膜への好酸球浸潤をきたす疾患である好酸球性食道炎の増加が欧米を中心に指摘されている.好酸球性食道炎では,縦走溝,輪状溝,カンジダ様の白斑等の内視鏡所見が特徴とされている.本邦では検診目的に上部消化管内視鏡検査が広く行われており,その中で好酸球性食道炎類似の内視鏡所見を契機としてEEが指摘された報告が散見されるが,このような症例の病的意義は不明な点も多い.今回検診で内視鏡的に異常を認め,生検で好酸球浸潤が確認された症例の臨床診断,経過を検討した.【方法】2010年3月から2012年10月までに検診目的の上部消化管内視鏡検査において食道に異常を認め,生検で食道粘膜好酸球浸潤(好酸球20個以上/HPF)が確認された10例を対象に,自覚症状,アレルギーの既往,内視鏡所見,PPIへの反応性を検討した.【成績】年齢は33-56歳.男女比は9:1. 3例で軽度の酸逆流症状を認めたが,7例は無症状であった.1例で喘息の既往あり,末梢血好酸球増多を2例認めた.内視鏡所見で全例に縦走溝を認めた.逆流症状を含む7例にPPI常用量が投与され,3例で症状は改善した.症状改善を認めた3例中1例は内服5か月後で内視鏡所見,組織所見は改善したが,1例は1年後も所見に変化なかった.PPIへの反応性から考えると今回の10例は,胃食道逆流症1例,好酸球性食道炎2例,残りの症例は無症状の食道好酸球浸潤と判定される.【結論】自覚症状の有無にかかわらず食道粘膜の縦走溝は食道好酸球浸潤の指標の一つと考えられる.現在のところ自覚症状のないEE症例において診断を確定する方法は限定的であるが,病態解明のためには症例の蓄積とともに注意深い経過観察が必要と考える.
索引用語 食道好酸球増多, 内視鏡診断