セッション情報 シンポジウム19(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

GERDにおける内視鏡診療の進歩

タイトル 内S19-5:

GERD診療ガイドラインにおける内視鏡の役割

演者 中川 健一郎(東北大大学院・消化器病態学)
共同演者 小池 智幸(東北大大学院・消化器病態学), 下瀬川 徹(東北大大学院・消化器病態学)
抄録 【目的】日本消化器病学会編集GERD診療ガイドラインのフローチャートには,GERDを疑う症状のあとに,「内視鏡を先に行う場合」と「治療を先に行う場合」との記載がある.本研究はガイドラインに即した日常診療を行った場合の内視鏡が果たす役割を明らかにすることを目的とした.【方法】2010年1月から仙台市の多施設(病院5施設,診療所7施設)にて連続するGERD患者210例(男性87例 平均年齢53.4歳)をガイドラインフローチャートに則って検査・治療を行った.症状評価にはFSSGを用い,8点以上をGERDと診断した.また,PPI投与後はFSSGが8点未満もしくは50%以上低下したものを症状改善と定義した.【成績】82.9%で治療前に内視鏡検査が施行されていた.平均年齢は,治療優先の47.0歳に比較して内視鏡優先で54.8歳と有意に高齢であった.初回のPPI処方の平均日数は,治療優先の25.0日に比較して内視鏡優先で38.1日と有意に長期処方がなされていた.PPI投与による初期治療における症状改善率は,治療優先80.0%,内視鏡優先68.2%と有意差は認められなかった.内視鏡優先で非びらん性GERD(NERD)が51.1%に認められた.PPI投与によるNERDの症状改善率は60.0%とびらん性GERDの75.0%に比較して低い傾向を示した.さらにNERDをgrade N, Mと分類し症状改善率を検討してみると,gradeNの症状改善率は50.0%とgrade Mの68.8%に比較して低い傾向を示した.【結論】今回の検討ではPPI投与前に内視鏡検査を施行している例が多かったが,その後の治療効果に有意差は認められなかった.しかし,PPI投与前に内視鏡検査を施行しNERDとびらん性GERDの診断を行うことはもちろんgrade NとMの診断を行うことでPPIの治療効果をある程度推察できる可能性が示唆された.さらに,内視鏡検査を優先した際はGERD以外の疾患を除外できるため初回からPPIを長期間処方しやすくなると推察された.
索引用語 ガイドライン, 内視鏡