セッション情報 シンポジウム19(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

GERDにおける内視鏡診療の進歩

タイトル 内S19-6:

食道内視鏡LAグレード分類NM/AB/CD別の患者背景,症状,PPI治療への反応性の検討

演者 中田 浩二(東京慈恵会医大・消化管外科)
共同演者 松橋 信行(NTT東日本関東病院・消化器内科), 樋口 和秀(大阪医大・2内科)
抄録 【背景】胃食道逆流症(GERD)は内視鏡所見に基づく食道炎の重症度により分類されるが,重症度とGERD症状の強度は必ずしも関連しないとの報告がある.重症度による患者像の相違について検討結果を報告する.【方法】2011年4月~2012年7月にGERD研究会の臨床試験参加50施設を受診した成人患者のうち,モントリオール定義に基づくGERD症状を有し,文書による同意が得られた患者を対象とした.内視鏡検査を実施後,標準用量のプロトンポンプ阻害剤(PPI)を4週間投与した.投与開始時には患者背景及び生活習慣を調査し,投与開始時,2週後,4週後にはそれぞれGERD-TEST(本試験用に策定した調査票),HADS(※ 2週後は施行せず),SF-8を用いたアンケートにより,GERD症状,機能性ディスペプシア(FD)症状,生活不満度,不安・抑うつ及びQOLの推移を調査した.【結果】調査票及びアンケートをともに回収しえた340名のうち,初回アンケート及び内視鏡検査を投与開始時から所定の期間内に実施した290名(男性178名,女性112名)を解析対象とした.年齢,BMIの平均はそれぞれ57.5±13.9歳,24.0±3.9 kg/m2であり,LAグレードはNMが107名(37%),ABが154名(53%),CDが29名(10%)であった.重症度(NM/AB/CD)別の解析で以下の項目で群間に有意差が認められた.即ち,NM群は女性が多く,BMIが低く,精神的QOLが悪かった.また,食事,仕事,気分への不満も強かった.開始時のGERD症状の強度に群間差はみられなかったが,NM群のFD症状,特に食後愁訴症状は他群に比べて強かった.2週後,4週後のGERD症状も,NM群では他群程改善しない傾向があった.【考察】食道炎の重症度はGERD症状の強度には影響しないが,食道炎のない患者の方がある患者と比べてFD症状が強く,精神的な不調や不満をより強く感じており,PPI治療への反応性は乏しい傾向がみられることから,治療経過をより注意深く観察し長期的な治療戦略を考慮する必要があると考えられた.
索引用語 非びらん性胃食道逆流症, プロトンポンプ阻害剤