セッション情報 シンポジウム20(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

本邦の脳死肝移植と生体肝移植の現状と将来

タイトル 外S20-1:

当科における生体肝移植と脳死肝移植の成績,脳死肝移植待機患者の予後

演者 池上 俊彦(信州大・消化器外科・移植外科)
共同演者 宮川 眞一(信州大・消化器外科・移植外科)
抄録 本邦において生体肝移植数は1999年に開始後2005年に566例になるまで増加したが以降は減少傾向であり2011年は406例であった.一方脳死肝移植は1999年に開始後施行数が少なかったが2010年の改正臓器移植法の施行により脳死肝移植数は増加した.2011年は40例であった.当科ではこれまでに生体肝移植290例と脳死肝移植13例の計303例の肝移植を施行してきたので,当科における肝移植の現状,脳死肝移植定期患者の予後を検討した.【対象と方法1】当科で施行した肝移植の生存率(1,5,10年)を生体肝移植と脳死肝移植にわけ検討した.【結果2】脳死肝移植13例及び生体肝移植290例の生存率は85,85,68%及び90,84,79%で有意差無し.成人例での脳死肝移植11例及び生体肝移植165例の生存率は,82,82,61%および90,82,73%で有意差無し.小児例では脳死肝移植2例及び生体肝移植125例での生存率は100,100,100%および90,88,85%.小児,成人共に生体肝移植の生存率は経時的に改善した.生体肝移植を施行した成人症例の主な疾患の生存率はC型肝炎(42例)93,77,64%,家族性アミロイドポリニューロパチー(38例)90,78,78%,PBC(27例)85,78,69%,劇症肝炎(12例)92,92,92%,成人型シトリン欠損症(12例)100,100,100%,B型肝炎(10例)90,80,53%,PSC(8例)88,88,88%.【対象と方法2】当科において臓器移植ネットワークに登録した患者の転帰を検討した.【結果2】登録患者は141名で,57名(40%)死亡,脳死肝移植施行13名(9%).取り消し18名の多くが状態の悪化に伴うものであり登録者の半数近くが死亡したと考えられる.【考察】生体肝移植と脳死肝移植の生存率に有意差は無かった.脳死肝移植では待機中の死亡が多かった.生体肝移植の最大の問題点はドナーに対して障害を与えることが不可避なことである.「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針おいても,「生体からの臓器移植は健常な提供者に侵襲を及ぼすことからやむを得ない場合に例外として実施されるもの」とされているがドナー不足のためやむを得ない状況が続いている.
索引用語 生体肝移植, 脳死肝移植