セッション情報 シンポジウム20(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

本邦の脳死肝移植と生体肝移植の現状と将来

タイトル 外S20-2:

当科における脳死肝移植待機中死亡症例の検討

演者 青柳 武史(北海道大大学院・消化器外科学分野I)
共同演者 山下 健一郎(北海道大大学院・移植外科学), 嶋村 剛(北海道大病院・臓器移植医療部)
抄録 【目的】臓器移植法改正後,年に40-50例の脳死肝移植が施行されている.当科では,これまでに26例の脳死肝移植を施行したが,その機会を得られずに待機中に死亡する症例も多い.脳死肝移植登録待機患者の3ヶ月致死率は10%と報告されているが,我が国での死亡症例についての検討は少ない.【方法】1999.5~2012.10までに当科で脳死肝移植登録を行った患者196例のうち,待機中に死亡した78例(WL群)と移植実施26例(DDLT群)を,性別,血液型,原疾患,登録時の重症度,待機日数において比較検討した.【成績】性別・血液型には両群に差は認めなかった.原疾患ではDDLT群で胆道閉鎖症が多い傾向にあった.登録時の重症度をMELD score (Model For End-Stage Liver Disease),Child-Pugh scoreで比較したところ両群に有意な差は認められず,むしろDDLT群に高い傾向にあった.待機日数の中央値は,WL群で143日(0-3021日),DDLT群で314日(3-2173日)と有意差を認めなかったが(p=0.225),最も症例数の多い緊急度6点で待機日数中央値を比較すると,WL群(n=38)で186日(3-1323日),DDLT群(n=16)で626日(35-1881日)とWL群で有意に短かった(p=0.002).待機中に緊急度を6点から8点へ変更した症例(WL群;n=8,DDLT群;n=6)では,共に変更後の待機日数には有意差はなく,それぞれ9日(2-88日),25日(9-71日)であった(p=0.142).【結論】WL群は登録時の重症度は変わらないものの,待機日数が有意に短かった.これは,WL群に肝不全が急速に進行した症例が多く含まれている可能性が考えられた.登録後の綿密なフォロー,そして適切な時期での緊急度変更が大切だが,現行のアロケーションシステムにおいて同一の緊急度で登録される症例に,肝不全の進行を急速に来す症例と緩徐に進行する症例が混在している可能性もあり,欧米の様なextra pointシステムの導入も考慮していく事が必要と考えられた.
索引用語 脳死肝移植, 待機中死亡