セッション情報 |
シンポジウム20(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
本邦の脳死肝移植と生体肝移植の現状と将来
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タイトル |
消S20-3:脳死肝移植と生体肝移植のすみ分けは可能か
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演者 |
田中 智大(東京大・臓器移植医療部) |
共同演者 |
菅原 寧彦(東京大・臓器移植医療部DELIMITER東京大・人工臓器・移植外科), 國土 典宏(東京大・臓器移植医療部DELIMITER東京大・人工臓器・移植外科) |
抄録 |
【背景と目的】脳死肝移植(DDLT)と生体肝移植(LDLT)の成績は各々同等とされているが,LDLTにおけるPSCの再発率が高い点や,HCC症例でのDDLT待機中のミラノ基準逸脱のリスク,劇症肝炎症例における生体ドナーへの時間的猶予の問題など,疾患に特異的な問題も考慮する必要があると思われる.1996年4月から2013年2月まで当院にて検討・施行された成人LDLTおよびDDLTについて解析した.【結果】期間中,臓器移植ネットワークにて脳死登録を完了した症例は135例で,内18例にDDLTが施行された.LDLTは421例施行された.DDLT登録完了群とLDLT施行群を比較すると,DDLT登録群で有意にPSC症例・再移植症例が多く(p=0.003,p<0.0001),肝細胞癌症例が少なかった(p=0.002)が,これは生体ドナー候補の不在や肝細胞癌に対する保険適応基準(Milan criteria遵守)の影響が否定できない.劇症肝炎症例の割合・肝硬変症例のMELDスコアには有意差を認めなかった.一方,DDLT実施18例を疾患別にみると,劇症肝炎5例,生体肝移植後の急性グラフト不全2例,ウイルス性肝硬変6例,PBC3例,PSC1例,非ウイルス性肝硬変1例で,LDLT施行群と比較し劇症肝炎が多く(p=0.02),肝細胞癌合併が少なく(p=0.01),PSCには有意差を認めなかった.肝硬変症例の移植時MELDスコアには有意差は認めなかった.1, 3, 5年累積生存率はDDLTで100%, 100%, 100%, LDLTで91.1%, 86.4%,83.7%と有意差は無かった(p=0.13).PSCの移植後再発は生体肝移植症例の43%(6/14)に認め,脳死肝移植の1症例にも再発が確認されている.【結語】症例数の限られた検討ではあるが,当院における脳死及び生体肝移植の術後成績は同等だった.しかし脳死肝移植が未だ年間40-50例にとどまる本邦の現状では,肝移植施行前にドナーを能動的に選択することは困難である可能性が示唆された.今後疾患特異性も考慮したよりよい肝移植を提供するためにも,脳死ドナーの更なる増加が期待される. |
索引用語 |
脳死肝移植, 生体肝移植 |