セッション情報 シンポジウム20(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

本邦の脳死肝移植と生体肝移植の現状と将来

タイトル 外S20-4:

現状を踏まえた肝移植医療と安定したシステム作りに向けての提言

演者 海道 利実(京都大大学院・肝胆膵・移植外科学)
共同演者 藤本 康弘(京都大大学院・肝胆膵・移植外科学), 上本 伸二(京都大大学院・肝胆膵・移植外科学)
抄録 【目的】脳死肝移植が予想より増えず,依然として生体肝移植が主体である現状を踏まえ,両者のadvantageについて検討し,将来に向けた安定したシステム作りに向けて提言を行う.
【脳死肝移植のadvantage】現状では,急性肝不全における緊急生体肝移植の回避と全国データに基づくPSC再発リスクの回避であろう.当科データでは,緊急度,MELD別で生存率に有意差を認めず.脳死ドナー増加のためには,ポテンシャルドナーの顕在化が重要であり,現実的な取り組みとして,脳外科病院を中心としたドナーアクションプログラムの推進と分割肝移植が挙げられる.
【生体肝移植のadvantage】脳死と異なり待機手術であるため,術前介入が可能である.当科で肝移植を施行し,術前に体成分分析装置にて骨格筋量を測定し得た124例につき,術前低骨格筋量群(90%未満, n=47)と正常/高骨格筋量群(90%以上,n=77)別生存率,各群における周術期栄養療法有無別生存率,多変量解析にて死亡危険因子(術前・術中因子)を検討した.その結果,術前低骨格筋量群は正常/高骨格筋量群に比べ,有意に生存率が低かったが(p<0.001),周術期栄養介入により術前低骨格筋量群においても生存率が有意に改善した(p=0.010).術前骨格筋量と体細胞量が独立危険因子であった.したがって,術前低栄養や低骨格筋量患者に対し積極的な栄養リハビリ介入を行うことで,移植後成績の向上が期待される.
【Sustainableな肝移植システム構築】たとえ症例数が増加しても,外科医・内科医などのマンパワーとICUなどのハードが確保できなければ安定した肝移植医療は行えない.当院では,2011年夏,臓器移植を行う外科系各科と関連内科,病理部,精神科からなるチーム医療推進検討会を設立し,病院全体で移植医療を支援するシステムを立ち上げた.さらに,政府レベルでの強力な人的・法的・経済的支援も必要である.
【結語】肝移植医療の発展には,エビデンスに基づく肝移植医療とチーム医療,ハードの確保,政府レベルでの強力な支援などが重要である.
索引用語 肝移植, Sustainability