セッション情報 シンポジウム20(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

本邦の脳死肝移植と生体肝移植の現状と将来

タイトル 肝S20-6:

急性肝不全に対する肝移植: 脳死移植か生体肝移植か

演者 姜 貞憲(手稲渓仁会病院・消化器病センター)
共同演者 横山 健(手稲渓仁会病院・ICU), 嶋村 剛(北海道大大学院・消化器外科学分野I)
抄録 【目的】2010年7月の臓器移植法改正後,約7倍に増加した脳死肝移植数は生体肝移植の減少分で相殺され,急性肝不全(ALF)に対する肝移植数の増加に直結しているとは言い難い.急性肝不全(ALF)治療では逼迫した時間的制約の下,内科治療継続・肝移植移行の選択に加え,「脳死か生体か」の選択も新たに迫られている.我々の診療システムにより法改正後に診療したALFにおいて肝移植に関わる問題点の解明を試みた.【対象と方法】00年から13年3月迄に診療した昏睡型ALF49例中法改正後の7例を対象とした.1)臨床像,2) 生体・脳死donor検討,3)治療経過を概括した.ALFは11年の診断基準に拠った.【成績】1) 対象(女4,年齢中央値54[22-64]歳)の成因はAIH(含疑診)2例,OTCD,acetaminophen中毒,潰瘍性大腸炎由来HBV再活性化,Wilson病,成因不明各1例で,病型は急性型3,亜急性型2,LOHF1,分類不能1であった.2)昏睡診断と同時に全例で生体donor検討を開始,1例のみで適格donorを確保した.7例中6例で脳死登録を検討,5例を登録した.3)内科治療で3例は生存した.AIH疑診1例は脳死登録直後に脳死donorが出現するも脂肪肝のため施術されず覚醒後現在も治療中,OTCD1例は脳死登録49日で脳死肝移植を受け生存した.死亡は2例で,再活性化1例はLOHF診断時既に感染症を併発し脳死登録断念,Wilson病1例では脳死登録21日後脳死donorが発生したがcandida, CMV感染で待機inactive,感染回復後脳死待機に復帰するもdonorの出現なく34日後適応生体donorから移植を予定したが状態不良で非施行,その後脳死donorが2回出現したが耐術能低下のため施術を断念した.【結語】昏睡型ALFでは,肝移植耐術能維持期間が短く断続的である.適格生体donorを有する症例は限定されるが,生体移植には患者耐術期を逃さず施術できる優位性が存在する.脳死donorの圧倒的増加をみるまでは,脳死登録・待機と生体肝移植可能性の追求を並進させ,待機時間の最短化を図ることが望ましい.
索引用語 急性肝不全, 肝移植