セッション情報 シンポジウム20(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

本邦の脳死肝移植と生体肝移植の現状と将来

タイトル 外S20-7:

当科における劇症肝炎に対する脳死・生体肝移植の現況 ~緊急血液型不適合生体肝移植の選択肢~

演者 篠田 昌宏(慶應義塾大・外科)
共同演者 田邉 稔(慶應義塾大・外科), 北川 雄光(慶應義塾大・外科)
抄録 【背景】内科的治療が奏功しない劇症肝炎症例に対しては,生体・脳死肝移植の選択肢が存在するが,血液型適合生体ドナーも脳死ドナーも存在しない場合には,緊急血液型不適合生体移植は大きな救命選択肢となる.【方法】当院ではこれまで203例の生体肝移植を施行しているが,脳死肝移植は登録完了例が18例あるものの実施例はない.生体移植については劇症肝炎に対する実施例を,脳死肝移植については劇症肝炎に対する登録完了例について検討を加えた.また,当科で行った緊急血液型不適合成人生体肝移植の成績を報告する.【結果】当科で劇症肝炎に対して生体肝移植を施行したのは33例,成人,小児がそれぞれ21例,12例で,5年生存率は成人81%,小児67%であった.一方,臓器移植法改正後に劇症肝炎で問い合わせを受けたのは31例あったが,脳死登録を完了したのは4例で,それぞれ17,2,20,21日間待機したがオファーなく,死亡,生体移植,軽快,抄録登録時待機中という結果であった.脳死登録をしたものの2日目に生体肝移植を行った症例は,生体ドナー候補の夫が血液型不適合であったため脳死優先で待機していたが,膵炎となったことを契機に緊急血液型不適合生体肝移植に踏み切った.リツキシマブ投与は1病日の1回のみとなるなどプロトコールの一部改変を余儀なくされたが,術後は抗体関連拒絶を認めず9か月生存中である.リツキシマブ導入後,劇症肝炎に対する緊急血液型不適合移植を他に2例経験しているが,抗ドナー血液型抗体が非緊急症例に比し高い傾向を認めるもののいずれも長期生存している.【結語】当院では,成人劇症例に対する生体肝移植は有効な救命選択肢である.一方,脳死肝移植は,限られた登録数ではあるが有望な選択肢となりえていない.血液型適合ドナーが存在しない場合,不適合ドナーを用いた生体肝移植も選択肢になりうると考えている.
索引用語 肝移植, 劇症肝炎