セッション情報 |
シンポジウム20(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
本邦の脳死肝移植と生体肝移植の現状と将来
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タイトル |
外S20-8:アルコール性肝硬変に対する肝移植症例における生命予後因子と再飲酒危険因子の検討:多施設共同研究
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演者 |
江川 裕人(東京女子医大・消化器外科) |
共同演者 |
梅下 浩司(大阪大大学院・消化器外科学), 上本 伸二(京都大大学院・肝胆膵・移植外科学) |
抄録 |
本邦のアルコール性肝硬変に対する肝移植における生命予後因子と再飲酒危険因子を検討した.方法:2011年12月までに初回肝移植を受けた37施設195例(日本肝移植研究会登録症例)を対象とした.結果:生体肝移植施設方針として6カ月ルールを,堅持するが21施設,救命のためには斟酌が13施設,考慮しないが3施設であった.在院死26例と退院したが再飲酒の情報がない29例を除く140例で再飲酒に関する検証を行った.195例における患者生存率は1年82%,3年78%,5年75%,10年50%であった.有為な術前危険因子はMELD19点以上とドナー50歳以上のみであった.退院後死亡原因は感染症9例,肝癌再発5例,胆管炎2例,アルコール性肝硬変2例,胃癌,肺癌,くも膜下出血,心筋梗塞,肺水腫,慢性拒絶,腹腔内出血,事故各1例であった.飲酒量を問わない再飲酒(再飲酒)と肝障害を伴う再飲酒(有害再飲酒)が生命予後に及ぼす影響は,再飲酒ではp=0.0655,有害飲酒ではp=0.0047であった.再飲酒の有為な危険因子は,単変量解析で,術前アルコール症以外の精神科的疾患既往,術前と術後それぞれの未婚,免疫抑制剤ノンコンプライアンス,術後喫煙であり,有害再飲酒では,術前独居,術前と術後それぞれの未婚,免疫抑制剤ノンコンプライアンス,通院ノンコンプライアンス,術後喫煙,ドナー因子として両親(50%)と兄弟・姉妹(35%)であった.一方,有害再飲酒率は,配偶者では10%,脳死・ドミノでは14%,子供7%であった.多変量解析では服薬ノンコンプライアンスが再飲酒の,通院ノンコンプライアンスが有害再飲酒の有為な危険因子であった.6カ月禁酒とHRAHスコアーは再飲酒の予後には寄与しなかった.結語:有害再飲酒は生命予後危険因子である.術前飲酒状況から術後再飲酒を予測することは困難であり,術後生活面のサポート体制が成績向上の要である. |
索引用語 |
アルコール性肝硬変, 肝移植 |