セッション情報 シンポジウム20(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

本邦の脳死肝移植と生体肝移植の現状と将来

タイトル 肝S20-9:

生体部分肝移植を施行した小児期発症原発性硬化性胆管炎の予後

演者 乾 あやの(済生会横浜市東部病院・こどもセンター肝臓・消化器部門)
共同演者 江川 裕人(東京女子医大・消化器外科), 市田 隆文(順天堂大静岡病院・消化器内科)
抄録 【背景】生体部分肝移植(LRLT)を施行された原発性硬化性胆管炎(PSC)症例では,1)MELD scoreが高い,2)ドナーが一親等,3)術後のサイトメガロ感染症,4)早期の胆管吻合部合併症が,再発の危険因子である(Am J Transplant, 2011 11:1-10).【目的】LRLTを施行した小児期発症PSCの予後の検討.【対象と方法】全国調査で登録された症例のうち,18歳未満(小児)と18歳以上の症例(成人)で2)~4)の項目について比較検討するとともに,1987年から2012年までに小児肝臓専門施設で経験したPSC22例の予後を検討.【結果】全国調査登録例のうち,小児は13例(14%),成人は79例(86%).小児の移植時年齢中央値8歳,男:女=6:7.各項目の比較では,2)小児13例(100%)vs. 成人41例(52%),3)小児5例(38%)vs. 成人18例(22%),4)小児3例(23%)vs. 成人15例(19%)で特にドナーについては有意に小児で一親等が多かった(p<0.01).小児のドナー年齢は中央値41歳でいわゆる壮年期に属していた.小児でのgraft lossは13例中5例(38%),再発4例,残りの1例は再発以外の原因で死亡.再発の4例のうち,2例は再移植,2例は死亡.死亡例の年齢は各々17歳,18歳,22歳.小児肝臓専門施設での22例の発症時年齢は中央値8歳,男:女=12:10,診断時年齢の中央値9.5歳,観察期間の中央値5年.5例(23%)に生体部分肝移植をうけ,2例(9%)が移植待機中.LRLT年齢は中央値12歳で,ドナーは全例一親等.転帰は,全例で移植後に再発し,1例は27歳時にde novo扁平上皮がんで死亡.【考察と結語】2010年に臓器移植改正法が施行されたからも肝移植待機例から考慮すると提供者は不足している.小児PSCの肝移植は脳死肝移植を第一に考慮すべきであり,国民への脳死に対する理解を広げる必要がある.
索引用語 脳死肝移植, 原発性硬化性胆管炎