セッション情報 |
シンポジウム21(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)
Colitic cancer を克服する
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タイトル |
消S21-1:潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌/dysplasiaの内視的危険因子の検討
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演者 |
松岡 克善(慶應義塾大・消化器内科) |
共同演者 |
岩男 泰(慶應義塾大・予防医療センター), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】潰瘍性大腸炎(UC)の長期経過例に慢性炎症を母地とした大腸癌発生の頻度が高いことが知られている.UCに合併する大腸癌(UC associated colorectal cancer; UC-CRC)を早期に発見するために長期経過例を対象にsurveillanceが行われているが,すべての症例に画一的な1年に1回のsurveillanceが必要かどうか不明である.そこで,今回の検討ではUC-CRC/dysplasia症例の腫瘍発見前の内視鏡像を解析することにより,UC-CRC/dyaplasia合併の内視鏡的危険因子を明らかとし,高危険群を選定することを目的とした.【方法】当院で診療を行ったUC-CRC/dysplasia症例のうち,腫瘍診断5年前以内の内視鏡所見が検討可能な22症例をcaseとし,年齢・性別・病変範囲・罹患年数を一致させた44症例を対照としたretrospective case-control studyを行った.【成績】UC-CRC/dysplasiaを合併した症例の平均罹病年数は14.9年であった.UC-CRC/dysplasiaは,29病変のうち直腸に13病変,S状結腸に13病変と遠位結腸に89.6%が存在していた.5年間での内視鏡施行回数は,Case群では71回(3.2回/5年),Control群では136回(3.1回/5年)であった.次に内視鏡所見として炎症性ポリープ,潰瘍瘢痕,腸管狭小化,backwash ileitis,過去5年間での内視鏡的寛解の有無を選択し,検討を行った.その結果,過去5年間に1度でも内視鏡的寛解が認められたのは,Case群では22例中7例 (31.8%)に過ぎなかったのに対して,Control群では44例中36例 (81.8%)であり,5年以内に内視鏡的寛解を認めた症例では,Odds ratio 0.09 (95%信頼区間: 0.03-0.30)とUC-CRC/dysplasia発症リスクの有意な低下が認められた.【結語】内視鏡的な炎症の持続が,UC-CRC/dysplasiaの危険因子と考えられた.そのため,内視鏡的に炎症が持続している症例においては,surveillanceが特に重要と考えられた.また,今回の結果から粘膜治癒を目指す治療を行うことで,UC-CRC/dysplasiaの発生を抑制できる可能性が示唆された. |
索引用語 |
潰瘍性大腸炎, 大腸癌 |