セッション情報 シンポジウム21(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

Colitic cancer を克服する

タイトル 消S21-2:

潰瘍性大腸炎における腫瘍性病変発生の危険因子

演者 樋田 信幸(兵庫医大・内科(下部消化管科))
共同演者 堀 和敏(兵庫医大・内科(下部消化管科)), 中村 志郎(兵庫医大・内科(下部消化管科))
抄録 【目的】潰瘍性大腸炎(UC)関連腫瘍を早期に発見するためにはsurveillance colonoscopy(SC)が重要であり,その対象者は年々増えている.そのため,腫瘍合併の高危険群を絞り込むことが臨床的課題となっているが,本邦において危険因子は明らかにされていない.我々は,腫瘍合併の危険因子となる臨床的背景や内視鏡所見について検討するため,症例対照研究を行った.【方法】2004年から2012年までに我々の施設で行ったSCで診断したUC関連腫瘍合併18症例(dysplasia:15,癌:5)を,各症例2名ずつ同じSCの対象者で腫瘍を合併していないUC患者(n=36)とマッチさせた.マッチさせた項目は,性別,初発年齢,罹患期間,罹患範囲である.過去の入院回数,最近5年間の活動性,大腸癌の家族歴,原発性硬化性胆管炎,薬剤投与歴(5-アミノサリチル酸,アザチオプリン)などの臨床背景因子およびbackwash ileitis,炎症性ポリープ,萎縮/鉛管状,狭小化/狭窄,多発潰瘍瘢痕,正常内視鏡などの内視鏡所見について,ロジスティック回帰解析を用いて腫瘍発生のオッズ比を算出した.【成績】単変量解析において, 過去の入院回数が2回以上(オッズ比[OR]4.7,95%信頼区間[CI]1.4-16.6),最近5年間における臨床的活動期の期間が20%以上(OR 4.4,95%CI 1.3-17.9),炎症性ポリープ(OR 5,95%CI 1.4-18.9),狭小化/狭窄(OR 6.5,95%CI 1.2-49.8)が腫瘍の合併に有意に関連した.また,腸管変形を伴わない正常内視鏡所見が腫瘍合併を抑える傾向にあった(OR 0.28,95%CI 0.06-1.04).これら5つの因子の多変量解析においては,入院回数(p=0.0037),炎症性ポリープ(p=0.0168),狭小化(p=0.02)の3項目が有意差を示した.【結論】患者背景では過去の入院回数が2回以上,内視鏡所見では炎症性ポリープと狭小化/狭窄がUC関連腫瘍発生の危険因子であった.これらの危険因子を加味した効率の良い最適なSCの方法を確立することが今後の課題である.
索引用語 潰瘍性大腸炎関連腫瘍, 危険因子