抄録 |
【背景】潰瘍性大腸炎(以下UC)に合併する大腸癌は,炎症を母地に発生するため,早期診断には課題が多い.近年の内視鏡機器の進歩により,粘膜表面や血管構造などを拡大観察することで,早期診断への期待が高まっている.【目的・方法】当科および関連施設で経験したcolitic cancer(以下CC)16例19病変(pSS癌3病変,pMP癌4病変,pSM癌5病変,pM癌7病変),dysplasia12例15病変の計34病変を対象とし,拡大観察(pit pattern)を含めた内視鏡所見につき検討した.pit patternは工藤・鶴田分類を用いた.【結果】肉眼形態は,扁平隆起16病変,顆粒結節集簇11病変,広基性隆起3病変,有茎性隆起2病変,平坦2病変であった.病変の色調は20病変で発赤,12病変で褪色であり,CCでは20病変が発赤であった.pit pattern観察では観察可能であった32病変で,CCの癌部ではIV型16病変(50%),VI型9病変(28%)の順で多く,進行癌の指標であるVN型は3病変(9%)と低率であった.Dysplasia13病変では,IV型が10病変(76%)と大部分を占めた.【考察】CC,dysplasiaは通常の大腸腺腫・大腸癌と比較して早期診断は容易ではなく,深達度診断に難渋する症例が存在した.しかしながら,通常観察で発赤した病変で,pit patternのIV型・VI型を呈するCC症例が多く存在し,診断に有用と考えられた.【結語】C.C./dysplasiaは様々な肉眼形態を呈するが,周辺粘膜との違いを認識して,拡大観察を行うことが重要と考えられた.また,拡大観察においては通常の大腸癌より深い傾向にあり,診断の際には十分な注意を要すると考えられた. |