セッション情報 シンポジウム21(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

Colitic cancer を克服する

タイトル 内S21-6:

クローン病に合併した大腸癌の特徴と対策

演者 志賀 永嗣(東北大病院・消化器内科)
共同演者 木内 喜孝(東北大高等教育開発推進センター), 下瀬川 徹(東北大病院・消化器内科)
抄録 【目的】炎症性腸疾患の長期経過例が増加する中で,以前はまれとされたクローン病(CD)に発生する大腸癌が本邦でも散見されるようになってきたが,その特徴は欧米の報告とは異なる点が多い.CDに合併した大腸癌の臨床病理学的な特徴や診断までの経緯を解析し,危険因子と適正なサーベイランス方法を検討することとした.
【方法】当科で加療を行なったCD患者541例のうち,炎症を背景にして発生したと考えられる大腸癌(colitic cancer) 8例を対象とした.検討項目は,1. 癌診断前の臨床背景(性別,CD診断年齢,病型,肛門病変の有無など),2. 癌診断時の臨床背景(癌診断までの罹病期間,症状,診断方法など),3. 病理組織学的事項(部位,組織型など)とした.
【成績】1. 男性5例(62.5%),平均診断年齢28.1歳,大腸型1例・小腸大腸型7例,狭窄型1例・穿孔型7例であった.7例(87.5%)で肛門病変を認めており,全例で腸管切除の既往を有していた.免疫調整剤内服例はいなかったが,3例(37.5%)でInfliximabを投与されていた.2. 平均癌診断年齢47.9歳,癌診断までの平均罹病期間19.8年であった.有症状例は7例(87.5%)であったが,その内訳は難治性の肛門部病変3例(腫瘍マーカー高値と肛門部生検で診断)・粘液や血便の増加が3例・腸閉塞が1例であった.無症状の1例は内視鏡下の生検で診断された.3. 発生部位では直腸と肛門管が大半を占め(7例, 87%),組織型は粘液癌が最も多かった(7例, 87%).
【結語】CDに合併した大腸癌は,長期経過例の直腸・肛門部からの発生が主であった.長期に炎症が持続する難治性の直腸・肛門部病変を有する症例,特に粘液排出が増加した場合などには,定期的な腫瘍マーカーのチェックと骨盤部MRIに加え,積極的な生検(内視鏡が困難な場合は局所麻酔下あるいは腰椎麻酔下生検)を行う必要がある.
索引用語 クローン病, colitic cancer