セッション情報 シンポジウム21(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

Colitic cancer を克服する

タイトル 消S21-9:

Crohn 病に合併した直腸肛門管癌の特徴と癌サーベイランス法の検討

演者 杉田 昭(横浜市立市民病院・炎症性腸疾患センター)
共同演者 小金井 一隆(横浜市立市民病院・炎症性腸疾患センター), 辰巳 健志(横浜市立市民病院・炎症性腸疾患センター)
抄録 【目的】Crohn病に合併した直腸肛門管癌の特徴を自験例で分析し,本邦で高頻度に合併する直腸肛門管癌に対するサーベイランス法の確立について検討した.【対象,方法】自験Crohn病1261例のうち大腸癌合併は24例で,最も多くを占めた直腸肛門管癌22例(1.7%)の臨床病理学的特徴を検討し,厚労省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班による癌サーベイランスのpilot study(10年以上経過した直腸肛門病変を対象に,大腸内視鏡検査,外来,または腰麻下での細胞診,生検を行う多施設共同研究)の自験例での中間結果を分析した.【結果】1)直腸肛門管癌16例(下部直腸癌15例,肛門管癌1例): Crohn病罹病期間(中央値)は19.6年で,肉眼型はIV型が7例,V型が4例と多く,組織型は粘液癌が5例,印鑑細胞癌が4例と多くを占めた.癌発見の動機は臨床症状の変化が12例と多いが癌サーベイランスのpilot studyで2例が診断され,stage IIが7例,IVが4例と多かった.空置直腸の癌が4例に見られた.2)痔瘻癌6例:痔瘻罹病期間(中央値)は23.4年で,組織型は粘液癌3例,中分化腺癌2例,扁平上皮癌1例であった.癌発見の動機は臨床症状の変化が4例と多く,2例は切除標本で癌が発見され,stage IIが3例,IVが3例であった.3)厚労省pilot study:自験例での細胞診36例,内視鏡下生検13例,外来時生検2例,全身麻酔下生検1例の検索で,内視鏡生検により直腸癌2例が診断された(3.9%).【結論】長期にわたる直腸病変や痔瘻を合併するCrohn症例で粘液排出などの臨床症状の変化がある際には,直腸肛門の細胞診,生検を行なうことが癌の早期診断に重要である.本邦で多くみられるCrohn病に合併する直腸肛門管癌に対する癌サーベイランス法の確立のためには厚労省研究班でのpilot studyでの多数例の検証が必要である.
索引用語 Crohn病, 直腸肛門管癌