セッション情報 シンポジウム22(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器癌内視鏡治療・鏡視下手術後の再発病態と対策

タイトル 外S22-2:

深達度SM,MP大腸癌に対する鏡視下手術の長期成績

演者 宅間 邦雄(都立多摩総合医療センター・外科)
共同演者 小坂 至(都立多摩総合医療センター・外科), 松本 潤(都立多摩総合医療センター・外科)
抄録 【目的】当院では大腸癌に対する鏡視下手術を1995年より行っている.当初は早期癌より開始し,徐々に適応を拡大し現在は進行癌に対しても積極的に行っている.鏡視下手術導入初期の適応であった腫瘍の進展が限られ高率に治癒が見込める深達度SM,MP大腸癌の長期成績を明らかにする.【方法】1997年から2008年までに当院で行われた組織学的深達度SM,MP大腸癌を対象とした.再発形式,時期,再発後治療を調査し開腹と鏡視下手術を比較した.【成績】患者背景は開腹で直腸症例が多く,MP癌で腫瘍径が大きいがリンパ節転移率は有意差なし.鏡視下手術後再発はSM癌238例中2例(0.8%),MP癌71例中3例(4.2%),開腹手術後再発はSM癌92例中4例(4.3%),MP癌201例中14例(7.0%)で有意差なし.鏡視下手術再発5例の詳細はSM(1)70歳男S,内視鏡治療後追加切除で1sp,1.2cm,tub2,SM2,N0(0/0),PM0.5cm,術後37ヵ月で吻合部再発し手術行うが肝,骨に再発し61ヵ月ホスピス転院.SM(2)71歳女S,1sp,1.7cm,tub1,SM(2250μm),ly0,v0,N2(5/5),術後36ヵ月で中枢血管処理したクリップ断端に10mm腫瘤出現しているが気づかず,77ヵ月に4cmに増大し,左水腎で発見.抗癌剤治療後に切除し再発なし.MP(1)72歳男S,type2,4.2cm,tub1,N0(0/12),術後12ヵ月で仙骨前面に再発し抗癌剤治療行うが増悪し54ヵ月死亡.MP(2)71歳男S,type1,2.0cm,tub1,N1(1/10),術後12ヵ月で肝S4に1.2cm再発し肝内側区域切除後再発なし.MP(3)77歳女S,type2,3.5cm,tub1,N0(0/18),術後11ヵ月で肝S8に1cm再発し,腹腔鏡下肝S8部分切除後再発なし.SM(1)はPM0.5cmと少なく取り残した腸管傍リンパ節転移からの再発,SM(2)は取り残した中間リンパ節再発と考えられる.MP(1)はわずかに直腸固有筋膜を損傷しており再発につながった可能性がある.【結論】未熟な鏡視下手術手技が再発につながる危険性を認識した手術を行えば鏡視下手術が開腹手術より長期成績が劣ることはない.むしろ鏡視下の利点を生かし,今後治療成績を上げるべく努めている.
索引用語 大腸癌, 鏡視下手術