セッション情報 シンポジウム22(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

消化器癌内視鏡治療・鏡視下手術後の再発病態と対策

タイトル 外S22-4指:

腹腔鏡下結腸癌手術後の再発病態と予後の検討

演者 石井 良幸(慶應義塾大・一般消化器外科)
共同演者 長谷川 博俊(慶應義塾大・一般消化器外科), 北川 雄光(慶應義塾大・一般消化器外科)
抄録 [目的]腹腔鏡下結腸癌手術の長期予後は明らになりつつある.しかし,再発病態についての検討は十分とはいえず,腹腔鏡手術手技の腫瘍学的安全性は確立されていない.そこで,本術式の長期予後に与える影響を再発形式から検討し,本術式の適応や手技,フォローアップの適正を明らかにする.[方法]1992年から2008年までに当科で行われた結腸癌治癒切除例986例を対象とし,propensity-adjusted modelとcompeting-risks analysisの統計的手法を用いて結腸癌術後再発形式(肝,肺,局所,腹膜,その他,および多臓器)と腹腔鏡下手術(LS)の関連を臨床病理学的因子とともに評価した.また,無再発生存およびsalvage手術の成績も評価し,LSのフォローアップについて検討した.[結果]観察期間中央値は5年,再発は130例(肝:47例,肺:30例,局所:15例,腹膜:17例,その他:8例,多臓器:16例)に認め,5年生存率は86.1%であった.LSは419例に施行された.propensity-adjusted model による解析では,LSは各再発形式における有意は危険因子ではなく(hazard ratio,肝:0.93, p=0.84,肺:0.67, p=0.39,局所:0.56, p=0.46,腹膜:2.49, p=0.14,その他:0.47, p=0.53,多臓器:0.88, p=0.84),各再発形式は進行度に起因する臨床病理学的因子(hazard ratio,肝:リンパ節転移個数1.14, p<0.01,局所:腫瘍径1.22, p=0.04,病理学的深達度4.50, p<0.01,腹膜:病理学的深達度3.03, p<0.01,その他:リンパ節転移個数1.33, p<0.01)と関連を認めた.また,Kaplan-Meier解析では無再発生存率は開腹手術(OS)に比較しLSで有意に高く(p<0.01),再発症例におけるsalvage手術の有無別生存率はLSとOS間で有意差を認めなかった(有:p=0.734, 無:p=0.06).[結語]LSの再発病態は,OSと同様に癌の進行度と関連があった.現時点でLSの適応や手技は妥当と考えられるが,non-touch isolationなど腫瘍学的安全性を意識した手術が肝要である.また,LSのフォローアップはOSと同様の方針で良いと考えられる.
索引用語 結腸癌, 腹腔鏡下手術