抄録 |
【背景】大腸癌に対する腹腔鏡下手術は急速に広がりつつある.従来は早期癌を対象としていたが,現在では進行癌を対象とする施設も増加している.一方,本邦における長期成績ならびに再発形式については,未だ明らかでない.【対象】当科において1991年から2007年に根治手術が行われたStage I~IIIの大腸癌1265例.【検討1】各病期における予後を腹腔鏡下手術(Lap群)と開腹手術(OC群)で比較した.【結果1】観察期間の中央値は再発例で2.9年,無再発例で4.3年であった.各病期におけるLap群,OC群の5年生存率はStage I: 97.2% (n = 150),92.0%(n = 227)(p = 0.076), Stage II: 97.8% (n = 50), 85.2% (n = 380) (p = 0.17), Stage IIIa: 74.9%( n = 36), 79.2% (n = 252) (p = 0.47), Stage IIIb: 74.6% (n = 18), 63.3% (n = 152) (p = 0.69) であった.【症括1】各病期において,Lap群とOC群の予後に差を認めなかった.【検討2】前述の1265例中,Stage II~IIIの888例を対象に,再発部位別にLap群とOC群で再発率に差があるかを検討した.【結果2】Lap群,OC群における再発率は,肝臓6.7%, 10% (p = 0.26), 肺1.9%,8.5%(p = 0.0006), 局所5.8%, 5.9% (p = 0.95), 腹膜2.9%, 2.7% (p = 0.92), リンパ節1.9%, 3.9% (p = 0.28), その他の再発1.0%, 3.4% (p = 0.13)であった.【小括2】OC群で肺転移が多かったが,それ以外の再発部位においてはLap群,OC群で発生率に差を認めなかった.OC群で肺転移が多い原因の一つは,直腸進行癌が開腹手術で行われていることが一因と考えられた.【結語】腹腔鏡手術の治療成績は概ね満足できるものであった.今後はさらに症例を集積し,腹腔鏡手術に特有の再発形式が存在するかを明らかにする必要がある. |