セッション情報 パネルディスカッション1(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

C型肝炎を背景とした肝細胞癌-予防から再発治療まで

タイトル 肝PD1-4:

慢性肝疾患におけるDPP-4活性の臨床的意義

演者 甲賀 啓介(甲賀病院・消化器内科DELIMITER大阪大大学院・消化器内科学)
共同演者 巽 智秀(大阪大大学院・消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】DPP4 (Dipeptidyl Peptidase-4)は,GLP-1などのN端の2つのペプチドを切断する酵素である.血清中のDPP4活性は,癌肥満などのさまざまな疾患によって変動することが知られているが,慢性肝疾患における詳細な検討はない.一方,我々はNK細胞感受性の主要な規定因子であるMICAが,慢性肝疾患において発現することや,癌の浸潤・転移に重要な役割を果たすプロテアーゼの一群であるADAM -10を介したprocessingにより,NK細胞を介した抗腫瘍活性を減じることを報告しているが,その切断機構については不明な点が多い.今回,慢性肝疾患の進展度,肝発癌とDPP4との関連と,MICAの切断機構におけるDPP4の関与について検討した.【方法】検討1) 慢性肝疾患患者(健常群34例,C型肝炎群44例,肝癌群97例)を対象として,血中DPP4活性をECL法により測定した.検討2) ヒト肝癌細胞株を用いて,DPP4のノックダウン実験を行い,細胞表面上のMICAの発現をflow cytometry法で,培養上清中のsMICA濃度をELISA法で検証した.また,silencingによる細胞株のNK細胞感受性の変化については51Cr release assay法にて評価した.【成績】検討1) 血中DPP4活性は,健常群,肝炎群,肝癌群の順に有意に上昇していた(p<0.05).肝炎群では,血清中のDPP4活性が高い群において発癌率が有意に高率であった(p=0.032).また,肝癌症例では,血清中のDPP4活性が低い群で1年後の肝癌再発率は有意に低く(p=0.01),累積生存率も高い傾向が見られた.検討2) 2種の肝癌細胞株において,DPP4のsilencingによりADAM10は不活化され,その結果MICAの切断が阻害された.DPP4のsilencingによってMICAの切断が阻害された細胞に対して,NK細胞は高い傷害活性を示した.【結論】DPP4は,肝癌の高リスク群である慢性肝疾患患者において上昇しており,MICAの切断に重要な役割を果たすADAM10の活性化にも関与していることが明らかとなったことから,DPP4が慢性肝疾患患者において先天免疫応答を減弱させている可能性が示唆された.
索引用語 DPP-4, 肝癌