抄録 |
【目的】近年,肝硬変,肝癌患者の予後にsarcopenia(SP: 筋肉減少)が寄与することが報告されており,SPの評価法として第3腰椎レベルCTの筋肉面積L3 SMI (Skeletal Muscle Index: cm2/m2)が用いられる.筋肉量には男女間で差があることからcut-off値を男性52.4,女性38.5とする報告が多い.今回,肝癌の再発にSPが関与するかを検討した.【方法】対象は肝切除,RFA,PEITで根治が確認された初発C型肝癌で,治療前後3ヶ月以内にL3 SMIが測定しえた91例.年齢71才(47-84),男性60例女性31例,hild-Pugh(CP) A78例B13例.SPの有無と再発率との関係をKaplan-MeierおよびCox比例ハザードモデルで検討した.【成績】L3 SMIのmedian (range)は男性45.5(24.4~73.9),女性41.0(32.4~63.4).上記cut-off値でのSP+の割合は男性17%,女性32%であった.SP+群とSP-群の累積再発率はそれぞれ1年38%,26%,3年87%,55%,5年91%,77%であり有意にSP+群で再発率が高かった(Log-rank test, p=0.02).単変量解析ではSP+ (HR:0.47, 95%CI:0.24-0.89, p:0.02),年齢(HR:1.03, 95%CI:0.99-1.08, p:0.11),性別(HR:1.29, 95%CI:0.71-2.34, p:0.41),CP (HR:2.00, 95%CI:0.93-4.32, p:0.078)であり,年齢・CP・SPで多変量解析したところ,SP+ (HR:0.43, 95%CI:0.22-0.83, p:0.01),CP (HR:2.4, 95%CI:1.08-5.14, p:0.03)であった.男女別解析では,男性で強くSPが再発率に寄与し,女性では再発率に関与しなかった.【結語】SPが肝癌治療後の再発に寄与する可能性が示唆された.インスリン抵抗性の関与が推測されるが,その機序は明らかでなく今後の検討課題である.また日本人におけるSPを判別するL3 SMI のcut-off値を再検討する必要がある. |