セッション情報 パネルディスカッション1(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

C型肝炎を背景とした肝細胞癌-予防から再発治療まで

タイトル 肝PD1-6:

非環式レチノイドと分岐鎖アミノ酸を用いた肝発癌抑制-肥満関連肝発癌抑制と両剤の併用投与による相乗的肝癌細胞増殖抑制-

演者 清水 雅仁(岐阜大大学院・消化器病態学)
共同演者 白上 洋平(岐阜大大学院・消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大大学院・消化器病態学)
抄録 【目的】インスリン抵抗性をはじめとする肥満や糖尿病に関連した病態は,C型肝炎を背景とした肝発癌を促進する.従って,C型肝炎関連肝発癌予防を実践するためには,これらの病態を踏まえた治療戦略が重要である.今回我々は,肝発癌抑制効果が期待されている非環式レチノイド(ACR)と分岐鎖アミノ酸(BCAA)が,肥満に関連した肝腫瘍形成を抑制するか,また両剤の併用によって肝癌細胞の増殖が相乗的に抑制されるか検討した.【方法】db/dbマウスを用いた肥満・糖尿病関連肝発癌モデルに,ACRおよびBCAAをそれぞれ経口投与し,腫瘍形成抑制効果を検討した.また,ヒト肝癌細胞株Huh7をBALB/cヌードマウスの皮下に移植した肝癌細胞移植片モデルに,ACR単独飼料,BCAA単独飼料,ACR/BCAA混餌飼料をそれぞれ投与し,移植片の増殖に対するこれらの薬剤の抑制効果を検討した.【結果】肥満・糖尿病関連肝発癌モデルにおいて,対照群と比較し,ACRとBCAAは肝脂肪化を改善し,血清インスリン値を低下させ,肝腫瘍形成を有意に抑制した.BCAAはIGF/IGF-1受容体シグナルの活性化と肝細胞増殖活性を抑制し,ACRは肝におけるRXRα蛋白のリン酸化と肝・血清炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6)の発現を抑制した.また両剤の併用投与によって,Huh7肝癌細胞移植片の増殖は有意に抑制され,腫瘍移植片におけるRXRα,ERK,Akt,IGF-1R蛋白のリン酸化抑制と,p21およびRARβ mRNAの発現上昇が認められた.【結語】ACRとBCAAは,肥満や糖尿病によって惹起された分子異常を改善・制御することで,肥満関連肝腫瘍形成を抑制した.またBCAAは,IGF-1Rシグナル(ERK,Akt)の活性化を抑制し,ACRによるRXRα蛋白のリン酸化抑制作用を促進することで,相乗的に肝癌細胞移植片の増殖を抑制した.今後,更なる増加が危惧される,肥満や糖尿病を合併したC型肝炎関連肝発癌の予防において,併用使用も含めたACRとBCAAの有用性が示唆された.
索引用語 非環式レチノイド, 分岐鎖アミノ酸