セッション情報 |
パネルディスカッション1(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
C型肝炎を背景とした肝細胞癌-予防から再発治療まで
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タイトル |
肝PD1-8:C型慢性肝炎からの発癌:ミトコンドリア遺伝子変異との関連について
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演者 |
榎本 平之(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)) |
共同演者 |
会澤 信弘(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)), 西口 修平(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)) |
抄録 |
【背景】DAA(Direct Antiviral Agent)で高率にHCV排除が望める時代も近いが,HCVが完全消失 (SVR)した症例にも発癌は認められる.IFN治療によるSVR後は年率約0.5%程度で発癌が認められるが,一方でIFNを含まない治療でのHCV排除後の発癌率は明らかではない.ミトコンドリアDNA (mtDNA)は修復酵素を持たず一旦生じた変異が保持されやすく,その異常はDNA傷害の蓄積を反映する可能性がある.これまでわれわれは肝発癌例ではmtDNAに多数の塩基変異が生じていることを報告してきた.今回mtDNAの変異と肝組織所見,あるいはIFN治療との関係を検討した.【方法】(1)HCV陽性肝癌の切除組織38例の非癌部(背景慢性肝疾患部)の組織と,C型慢性肝炎(非発癌症例:130例,肝癌既治療症例:11例)の肝生検組織を用い,mtDNAのうち最も変異が蓄積するD-loop領域の変異数を比較した.(2) SVR症例(非発癌症例:28例,肝発癌症例:9例)の組織所見とmtDNA変異について検討した.(3) IFN投与前後で肝生検を施行可能であった26例についてmtDNA変異を比較した.【結果】(1)発癌例の肝組織では,肝癌非合併のC型慢性肝炎例の組織に比してmtDNAの変異数は増加していた. (2) SVR症例でも電顕観察では形態異常は残存し,特に発癌例では小胞体とミトコンドリアの形態変化が顕著であり,かつこの形態的異常は,mtDNAの変異数と相関していた.(3)IFN投与により26例中の14例でmtDNA変異数の減少が認められた.【結論】HCV関連肝癌症例の背景肝組織では,mtDNAの異常が多く認められた.またSVR症例でも発癌例ではミトコンドリアの形態異常とDNA変異の増加が著明であった.これらのことからmtDNAの変異増加は癌化リスクと関連することが示唆された.一方でIFN投与がmtDNAの変異数を減少させたことから,IFN投与は発癌リスクを減少させる可能性が示唆された. |
索引用語 |
IFN, ミトコンドリア |