セッション情報 パネルディスカッション2(消化器病学会・肝臓学会合同)

B型肝炎治療の最前線

タイトル 肝PD2-1:

HBsAg消失を目標としたB型慢性肝炎に対するIFN治療の位置づけ

演者 保坂 哲也(虎の門病院・肝臓センター)
共同演者 鈴木 文孝(虎の門病院・肝臓センター), 熊田 博光(虎の門病院・肝臓センター)
抄録 【目的】核酸アナログ(NA)治療によるHBsAg消失率は未だ低率である.以前我々はNA投与例でのHBsAg消失に寄与する因子にIFN治療歴を報告してきた.そこで今回IFN治療によるHBs抗原消失に寄与する因子と治療後の経過を解析し,IFNとNAとの効果的な組み合わせ方法について検討した.【方法】当院でB型慢性肝炎に対して従来型IFN製剤を投与し,治療終了6ヶ月後の効果判定が可能だった544例(cIFN群)とPegIFN製剤を投与した22例を対象とした(Peg群).IFN効果判定の基準はALT<50IU/L,HBeAg陰性,HBVDNA量<5logを著効と定義した.【成績】 (1)cIFN群の投与期間の26週(median)で,治療終了6ヶ月後著効例は148例(27%)であった.544例中66例(13.5%)で追加治療無くHBsAg消失を認めた.累積HBsAg消失率は5年7%,10年14%,15年39%であった.HBsAg消失に寄与する因子を多変量解析したところ,30歳以上(HR:2.80, P=0.012),男性(HR:2.08, P=0.26),genotype A(HR:5.00, P=0.001),開始時HBsAg量2000IU/mL未満(HR:1.77, P=0.028)の4因子が抽出された.(2)cIFN群での効果判定別でのHBsAg消失頻度は,著効例で30%,非著効例で5.6%と有意に著効例でのHBsAg消失の頻度が高かった(P<0.001).非著効例396例の内その後に追加治療が276例で行われ,その内訳はIFNが45例,LAM190例,ETV41例であった.LAM追加群のHBsAg消失例のLAM開始時のALT値は,非消失例に比べて有意に高値であった(P=0.031).(3)Peg群の著効例は7例(32%)であった.22例中1例でPegIFN終了後にHBsAg消失を認めた.この症例の開始時のHBsAg量は1400IU/mLであった.PegIFN投与終了後に4例でIFNを,11例でETVの追加治療が開始された.IFN追加例で1例,ETV追加例で2例,追加治療開始後0.5logIU/mL以上のHBsAg量の低下を認めた.【結論】今後新たに抗ウイルス療法を導入する場合,いきなり核酸アナログを開始するのではなく,IFN投与を試みて非著効の場合に核酸アナログ治療に切り替えることが,HBsAg消失向上への一つの方策と考える.
索引用語 HBsAg, IFN