セッション情報 パネルディスカッション2(消化器病学会・肝臓学会合同)

B型肝炎治療の最前線

タイトル 肝PD2-10:

ラミブジン・アデホビル併用療法反応不良例に対するテノホビルへの切替効果

演者 三田 英治(国立大阪医療センター・消化器科)
共同演者 長岡 進矢(国立長崎医療センター・臨床研究センター), 石田 永(国立大阪医療センター・消化器科)
抄録 【目的】核酸アナログの導入によってB型肝炎の鎮静化が得られるようになったが,長期投与例が増加するにしたがい,反応不良例から耐性化する症例を経験するようになった.耐性化例に対するkey drugはテノホビル(TDF)であるが,日本ではまだB型肝炎に対し保険適応がない.今回,ラミブジン(LAM)・アデホビル(ADV)併用療法反応不良例に対するADVからTDFへの切替効果を検討した.
【方法】LAM耐性に対し,ADVを追加併用し,2年間経過してもHBV-DNAが4 log 10 copies/mL未満にならないB型慢性肝疾患例を反応不良例と定義し,ADVからTDFへの切替効果をHBV-DNAが2.1 log 10 copies/mL未満になる頻度で検証した.他の条件としては,(1) HBe抗原の有無は問わない,(2) 肝細胞癌はない,もしくは良好にコントロールされている,(3) ALT値も問わない,(4) 他の肝疾患が否定されていること,(5) HIV感染はない,(6) 腎機能が正常範囲,であることとした.
【成績】(1) 切替症例は16例,男性9例,女性7例である.HBV genotypeは全例C,LAM単独治療からADV追加併用までの期間は37ヶ月,ADV併用からTDF切替までの期間は51ヶ月であった.TDF切替時の年齢中央値は55歳,臨床診断は慢性肝炎12例,肝硬変4例であった.またHBV-DNAの中央値は4.5 log 10 copies/mL,ALT値は46.2±27.9IU/L,HBe抗原陽性14例,陰性2例であった.(2) HBV-DNAが2.1 log 10 copies/mL未満になる頻度はTDF切替後3ヶ月目で8/16(50.0%),6ヶ月目で13/16(81.3%),9ヶ月目で15/16(93.8%),12ヶ月目で16/16(100%)であった.TDF切替前の核酸アナログの変異をINNO-LiPA法で検討したが,ADV耐性を示す変異は全例で認めなかった.TDF切替後の腎機能低下は認めなかった.
【結論】TDFはLAM・ADV併用療法効果不良例に対する有効で安全な治療法と考えられた.
索引用語 テノホビル, 核酸アナログ