セッション情報 パネルディスカッション2(消化器病学会・肝臓学会合同)

B型肝炎治療の最前線

タイトル 肝PD2-13追:

B型肝炎治療における疾患進展と発癌に関わるウイルスマーカー

演者 坂本 穣(山梨大附属病院・肝疾患センター)
共同演者 井上 泰輔(山梨大・1内科), 榎本 信幸(山梨大・1内科)
抄録 【目的】B型肝炎の治療目標は,耐性獲得の低い核酸アナログ(NA)やIFN適応拡大により,HBVDNAの陰性化のみならずHBsAg陰性化や発癌抑制に変化している.そこで,治療の現状と疾患進展・発癌をIL28B SNPsを含む各種ウイルスマーカーから検討した.【方法】経過観察中のB型肝疾患患者313例,55.8±14.2(19-89)歳,M/F=180/133,自然治癒例/ASC/CH/LC/他=14/128/115/54/2例を対象とし,HBsAg(CLIA法)/Ab,HBeAg/Ab,HBVDNA,HBCrAg,HBV genotype(EIA法),IL28B SNPs(rs8099917)を測定した.【結果】1)ASC/CH/LCのgenotype A/B/C/他の分布は0/13/68/18,4/12/62/7,0/2/39/5であり,疾患の進展とともにCの比率が増加した(69/80/95%,P<0.05).2)IFN 2例(1%),NA 143例(46%)(LAM単独/LAM+ADV/ETV/他=4/21/116/2)(CH/LCでは適応外を除く126(75%))が導入された.3)NAは58.3±12.8ヶ月使用され,HBVDNA<2.1 log copies/ml,CrAg<3.0 logIU/ml,HBsAg<80 IU/mlの1/2/3/5年達成率は24/83/86/94,8/50/46/53,0/5/6/18%であり,HBVDNAが陰性化してもCrAgやHBsAgはNA中止基準を容易には達成しえなかった.4)担癌(HCC)例は49例で,非HCC例に比してNA治療期間,HBVDNA,CrAg量には差がなかったが,高齢(64.7対53.9 歳)でHBsAg量が有意に低かった(4946対525 IU/ml,P<0.05).5)IL28B SNPは,自然治癒例/ASC/CH/LCでのTTの比率が89/76/72/68%と疾患の進展とともに増加する傾向を示しgenotype Cに限るとこの傾向は顕著であった.NA使用例では耐性獲得によるLAM+ADVでTTが46%と低い傾向があったが,他の治療経過には差がなかった.【結論】B型肝炎の進展やNA耐性獲得にはHBVgenotypeやIL28B SNPsが関連していることが示唆された.NAは血中HBVDNAを抑制するがCrAgやHBsAgが疾患進展や発癌と関連する可能性が示された.
索引用語 B型肝炎, IL28B