セッション情報 パネルディスカッション3(消化吸収学会・消化器病学会合同)

機能性食品や補助食品の消化器疾患における役割

タイトル 消PD3-4追:

ケルセチンの非アルコール性脂肪性肝疾患の発症・進展に対する予防効果の検討

演者 堅田 和弘(京都府立医大・消化器内科)
共同演者 内藤 裕二(京都府立医大・消化器内科), 吉川 敏一(京都府立医大)
抄録 【目的】メタボリックシンドロームやその肝臓での表現型とされる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は,動脈硬化性疾患,糖尿病,悪性疾患の高危険群であり,その病態に脂質代謝異常,酸化ストレスの関与が示唆されているが,その詳細は明らかではない.またコレステロールの肝臓への取り込みと蓄積に,酸化ストレス由来タンパク質の修飾反応の重要な役割が報告されている.ケルセチンは,タマネギに多く含まれる主要フラボノイドの一つであり,酸化ストレスを軽減する抗酸化能を有しており,近年注目されている.本研究では,NAFLDモデルを用いて,NAFLDにおける酸化ストレス発症起因を解明し,さらにケルセチンのNAFLD発症・進展に対する予防効果を解明し,ヒトでの有効性を科学的に解明するための礎を築くことを目的とする.【方法】西洋食(高脂肪,コレステロール,高スクロース含有)をC57BL6マウスに摂取させるNAFLDモデルを作成した.ケルセチン投与群ではケルセチン0.05%混合飼料を摂取させた.8週間後に,肝臓・血清・赤血球を採取し,肝臓重量,血清生化学,肝臓の組織学,肝臓の炎症・線維化マーカー,肝臓中の脂質,および赤血球中の酸化ストレス由来タンパク質修飾の検討を行った.【結果】西洋食摂取による肝臓重量の増加,血清ALTや総コレステロールの増加,肝組織の脂質蓄積,肝臓の炎症マーカーの増加,肝臓のコレステロールエステルの増加は,ケルセチン投与により軽減されていた.また西洋食摂取による脂質過酸化由来の4-ヒドロキシ-2-ノネナールや解糖系およびメイラード反応中間体のメチルグリオキザールによるタンパク質の修飾増加は,ケルセチン投与により軽減されていた.【結論】NAFLDにおける酸化ストレス発症起因に酸化ストレス由来のタンパク質の修飾反応が明らかにされた.またケルセチンのNAFLD発症・進展に対する予防効果が明らかにされた.現在NAFLD患者に対し食事アンケートによる疫学調査を行っており,今後ヒトでの臨床試験へのステップとしたい.
索引用語 非アルコール性脂肪性肝疾患, ケルセチン