セッション情報 パネルディスカッション3(消化吸収学会・消化器病学会合同)

機能性食品や補助食品の消化器疾患における役割

タイトル 消PD3-5:

ポリフェノールによるインスリン抵抗性改善効果の分子機構

演者 大野 元子(東京大・消化器内科)
共同演者 大塚 基之(東京大・消化器内科), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【目的】従来から,ポリフェノールを含む様々な機能性食品が肝の脂肪化を抑える報告があるが,多くの場合その科学的根拠は不明であった.いっぽう非アルコール性脂肪性肝炎や併存するインスリン抵抗性はmicroRNAの過剰な作用によって惹起される可能性が示されている.そこで我々は,まずカフェインとポリフェノール成分のmicroRNAの機能に与える影響とその分子機構を解析し,その結果に基づいた病態改善効果をマウスモデルで検証した.【方法】1) カフェインとフラボノイド属のポリフェノール3種類およびフェノール酸属のポリフェノールであるクロロゲン酸の計5種類の成分について,microRNAの機能への影響をin vitroで検討した.2) microRNAの機能に影響する食品成分について,その分子作用点を解析した.3) インスリン抵抗性を呈するmicroRNA-103のトランスジェニックマウスを作製し,その食品成分のインスリン抵抗性改善効果を検証した.【成績】1) 検討した成分中,フラボノイドの一つであるアピゲニンだけがmicroRNAの機能を減弱させる作用を持っていた.2) 分子機構解析の結果アピゲニンはmatureなmicroRNAの産生量を減らすことを見い出した.この現象は,microRNAの成熟に必須な因子であるDicerと複合体を形成するTARBP2のMAPK依存的なリン酸化を抑制することに依存していた.3) インスリン抵抗性を呈するmicroRNA-103のトランスジェニックマウスの病態はアピゲニンによって改善した.【結論】今回ポリフェノールの一成分であるアピゲニンがmicroRNA機能の抑制を介してインスリン抵抗性を改善することが示唆されたが,作用機序から考えると過剰なmicroRNA機能に基づいて惹起されている他の病態をも改善する可能性が考えられる.このような機能性食品作用の分子機構解析は,その結果に基づいた疾患予防・治療応用への更なる展開につながると期待される.
索引用語 ポリフェノール, インスリン抵抗性