抄録 |
【目的】アミノ酸サプリメントは,トレーニング効果を高める目的や美容効果を目的として使用されている.ロイシン(leu)は肝脂肪化を抑制し,トリプトファン(Trp)は肝脂肪化を誘導するとの報告がある.非アルコール性脂肪肝は食事の欧米化により増加しているが,肝脂肪化に与えるアミノ酸の影響とその機序についての研究は少ない.そこでTrpとLeuの肝脂肪化における影響を検討した.【方法】4週齢雄性マウスに高脂肪食・果糖含有水を与えて肝脂肪化を誘導し,TrpまたはLeu同時摂取による肝組織中性脂肪量,ALT値,線維化,活性酸素産生,mTOR活性,AKT・AMPK活性に対する影響を検討した.次に,肝脂肪化に関連するTrp代謝経路や活性化因子を検討するため,Trpからセロトニン(5-HT)への代謝酵素であるAromatic amino acid decatoxylase (AADC)の強制発現,mTOR阻害剤(ラパマイシン)の効果を検討した.【成績】脂肪肝モデルにTrpを併せて投与したマウスでは,対照群(BSA投与)と比べ肝脂肪化は増悪し,血清ALT値上昇,HNE発現増加,肝線維化の増加が認められた.一方,Leu投与では対照群と差は認められなかった.Trpは5-HTを増加させ,5-HT増加を伴うAADCの過剰発現も同様に肝脂肪化を増悪させた.さらに5-HTは培養肝細胞において脂肪酸添加による中性脂肪蓄積を増加した.Trp,AADCの強制発現,5-HT投与はmTORのリン酸化を増加した.一方,Trpや5-HTによる肝脂肪化の増強効果は,mTOR阻害剤であるラパマイシンにより抑制された.Trpは絶食によるLC3凝集とp62分解を抑制したが,その効果はラパマイシンにより減弱した.【考案】Trpは高脂肪・果糖による肝脂肪化をさらに増悪した.一方,Leuに肝脂肪化に対する影響はなかった.肝脂肪化増悪の機序として5-HTへの代謝経路が関与しており,5-HTによるmTOR活性増加を介していることが示唆された.また,Trpは肝細胞のオートファジーをmTOR依存性に抑制したことから,Trpによるオートファジーの抑制が肝脂肪化増悪のメカニズムである可能性が示唆された.【結語】Trpは肝脂肪化を増悪する. |