セッション情報 パネルディスカッション3(消化吸収学会・消化器病学会合同)

機能性食品や補助食品の消化器疾患における役割

タイトル 消PD3-7:

エイコサペントエン酸(EPA)は大腸上皮の増殖を抑制しACFを減少させる:二重盲検無作為対照試験

演者 日暮 琢磨(横浜市立大・消化器内科)
共同演者 中島 淳(横浜市立大・消化器内科)
抄録 【緒言】エイコサペントエン酸(EPA)はイワシなどの青魚に豊富に含まれるω3脂肪酸のひとつであり,大規模臨床試験JELISにおいて冠動脈疾患を有意に予防し,すでに脂質異常症・閉塞性動脈硬化症などにおいて臨床応用されている.消化器領域においては,家族性腺腫瘍患者のポリープを縮小させたと報告されており,EPAによる大腸腫瘍抑制効果の可能性がある.今回,我々はEPAの大腸腫瘍化学予防効果を検討するために,大腸腫瘍のサロゲートマーカーである直腸ACFをターゲットとした無作為対照試験を実施した.
【方法】切除予定の大腸ポリープを有する20名が本試験に参加した.初回内視鏡時に直腸のACFのカウント,ポリープ・正常大腸上皮より生検を行った.無作為にEPA群とプラセボ群に割り付けを行った.EPA群はEPA0.9gを1日3回内服した.プラセボ群はオレイン酸0.9gを1日3回内服した.ポリープ切除までの5週間試験薬を内服後にポリープ切除を行い,初回内視鏡と同様の検査を行い検査前後,両群間で,ACF数,細胞増殖・細胞死を比較検討した.
【結果】両群とも軽度の嘔気の他は重篤な副作用は認めず,脱落者はいなかった.EPA群はACFが前後で有意に低下したが(前8.9±4.5,後4.7±2.3,p=0.003),プラセボ群は変化を認めなかった(前7.7±5.2,後8.8±8.0,p=0.347).EPA群では正常大腸上皮,ポリープで細胞増殖が抑制され,アポトーシスも増加していたが,プラセボ群では細胞増殖・細胞死の変化は認めなかった.
【考察】本試験はEPAを用いたヒトACFを対象とした世界初の二重盲検無作為対照試験である.EPAは正常大腸上皮・ポリープにおいて細胞増殖を抑制し,細胞死を増加させ,ACFを減少させた.EPAの化学予防効果の機序としては,アラキドン酸などのω6脂肪酸と競合的に作用しCOX-2の抑制する機序などがこれまで報告されている.また最近は糖脂質の代謝を制御するG蛋白共役受容体120のアゴニストがEPAであることが報告され大腸化学予防のメカニズムとして注目されている.今後の更なる臨床応用が期待される.
索引用語 EPA, 化学予防