セッション情報 パネルディスカッション3(消化吸収学会・消化器病学会合同)

機能性食品や補助食品の消化器疾患における役割

タイトル 消PD3-8追:

癌治療におけるeicosapentaenoic acid (EPA)の新たな可能性

演者 山田 岳史(日本医大・外科)
共同演者 小泉 岐博(日本医大・外科), 内田 英二(日本医大・外科)
抄録 【背景】eicosapentaenoic acid (EPA)は過剰な免疫反応や炎症反応を抑制する.進行癌患者では癌による持続的な炎症が誘発され,体蛋白の異化が亢進する.我々は癌に誘発される持続性炎症により大腰筋容積が減少すること,癌患者にEPAを服用させることによりCRPが低下し,EPAは癌悪液質による蛋白減少の改善に有効である可能性があることを報告してきた.更にEPAはサイトカイン産生を抑制し,またNF-κB抑制効果を介して,アポトーシスを促進し,抗腫瘍効果を持つ可能性がある.【目的】EPAの持つ抗腫瘍効果を検討する.【方法】抗癌剤感受性試験CD-DSTにて抗腫瘍効果を検討した.(1)予備実験としてHCT-116を用いEPAを15,50.150,500μM 24時間接触させたところ,50μM以下ではほとんど抗腫瘍効果を示さなかった.(2)大腸癌手術切除標本(9例)を用い,EPA 150μMおよび500μMをそれぞれ24時間接触させた.コントロールには1%エタノールを使用した.同時に5FUの抗腫瘍効果も検討した.【結果】EPA500はすべての症例でEPA150より強力な抗腫瘍作用を示した.EPA150は3例が5FUよりも強い抗腫瘍作用を示し,EPA500は全例で5FUより強い抗腫瘍作用を示した.【考察】市販のEPA含有機能性食品を1日2パック(1パックは240ml,EPAを1056mg含有)服用することにより血中EPA濃度が500μM以上になることが報告されており,本研究での接触条件は臨床上十分に達成可能な濃度である.これまでに大腸癌cell lineを用いてEPAがアポトーシスを誘発することが報告されているが,臨床検体を用いての報告はない.我々は臨床検体を用いてEPAの持つ抗腫瘍効果を示したが,これがアポトーシスによるものか検討を行っておらず,更なる研究が必要である.
索引用語 eicosapentaenoic acid (EPA), アポトーシス