セッション情報 |
パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会合同)
自己免疫性肝疾患の基礎・臨床の最前線
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タイトル |
消PD4-1:慢性から劇症まで多様な病態を呈する自己免疫性肝炎(AIH)モデルでの病態解析
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演者 |
渡部 則彦(京都大大学院・消化器内科学) |
共同演者 |
丸岡 隆太郎(京都大大学院・消化器内科学), 池田 亜希(京都大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
AIHは慢性肝炎から劇症肝炎まで病態は多彩であり,依然として病因や病態進行に不明な点が多い.AIHの多彩な病態の解析が可能な疾患動物モデルとして,私達は,抑制性共刺激分子PD-1を欠損したマウスにFoxp3+制御性T細胞除去目的に新生仔期胸腺摘除(NTx)を施行しAIHが発症するモデルを開発し報告してきた.<目的・方法>本研究では,AIHの多彩な病態の形成機序の解明と新たな治療法の開発を目指してモデルマウスでの免疫学的解析を行った.<結果>BALB/c系統のPD-1欠損マウスにNTxを行なうと血清IgG上昇と抗核抗体産生を伴い,約4週齢で致死に至る劇症型のAIHが発症した.これに対して,C57BL/6系統のPD-1欠損マウスにNTxを行なうと約4週齢で発症し血清IgG上昇と抗核抗体産生を伴い,肝線維化を来す慢性AIHが発症した.これらのことから同一の機序によりマウスの系統によって異なる病像のAIHが発症することが明らかとなった.さらにAIHの劇症と慢性肝炎モデルを解析し以下の結果を得た.1)AIHの発症誘導はクローナルに増殖したCD4T細胞によって惹起されること.2)そのCD4T細胞の活性化は脾臓で生じ,CD4T細胞は,胚中心を持つリンパ濾胞に局在し,濾胞ヘルパーT細胞(TFH細胞)としての形質を持ち,脾臓の濾胞でのB細胞活性化,血清IgGの上昇,抗核抗体の産生に関連すること.3)ステロイドを治療的に投与すると肝炎が改善されるが,脾臓の胚中心リンパ濾胞とTFH細胞が残存し,ステロイド治療中止にて肝炎が再燃すること.4)ステロイド治療後に肝炎誘導臓器である脾臓を摘出すると,ステロイド中止後も肝炎の再燃が抑制できること.5)脾摘はステロイド治療を施行せず単独でもAIHの治療として有効であること.6)肝炎で血清濃度が上昇するIFN-γ,TNF-α,IL-18などのサイトカインは各々病態形成での役割に違いがあること.<結論>疾患モデルにてAIHの発症誘導,病態形成,治療抵抗性に至る機序を明らかにした.これらの知見は,ヒトAIHの病因や病態進行の解明に役立つものと考える. |
索引用語 |
自己免疫性肝炎, 疾患動物モデル |