セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝疾患の基礎・臨床の最前線

タイトル 肝PD4-2:

自己免疫性肝炎の肝細胞傷害におけるMHC class II分子の関与

演者 上村 博輝(新潟大大学院・消化器内科学)
共同演者 山際 訓(新潟大大学院・消化器内科学), 青柳 豊(新潟大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis; AIH)の発症時に高率に出現することを報告した抗HLA(human leukocyte antigen)抗体について,allele特異性を確認するとともに,肝細胞傷害におけるMHC class II分子の関与を検討することを目的とした.【方法】2012年12月までに診断および治療された女性のAIH 35例を対象とし,原発性胆汁性肝硬変(PBC)30例と健常人 30例を対照群とした.保存血清を用いてLuminex法により抗HLA class Iおよびclass II抗体を測定し,抗HLA class II抗体陽性例についてはLuminex法によりallele特異性を確認するとともに,末梢血を用いてHLA DNA typingを施行した.また,肝組織におけるHLA class II発現を免疫組織染色により検討し,不死化肝細胞と肝癌細胞株におけるHLA class II発現をin vitroで検討した.【成績】AIHでは抗HLA class II抗体が81.8%で陽性であり,PBC 33.3%,Control 13.3%の陽性率と比較して有意に高率であった.Luminex法によるallele特異性の検討により,AIHにおける抗HLA class II抗体陽性例には多数のalleleに対する抗HLA class II抗体が検出される症例が認められ,HLA DNA typingを施行出来たAIH 9例中4例に自己のHLA class II alleleに対する抗体の存在が確認された.自己のHLA class II alleleに対する抗体陽性例は,自己のalleleに対する抗体陰性例や抗HLA抗体が陰性の症例と比較して有意に発症時のtransaminaseが高値であり,総ビリルビン値も高値であった.また,AIH肝組織ではinterface hepatitis周囲の肝細胞にHLA class II発現が認められるとともに,in vitroの検討でもIFN-γにより肝細胞でHLA class II分子の発現が誘導されることを確認した.【結論】AIH発症時における自己のHLA alleleに対する抗HLA抗体の出現は重症化との関連が示唆され,AIHの肝細胞傷害の増悪・進展に関与する可能性があると考えられた.現在,ConA肝炎モデルを用いて抗MHC class II抗体投与の効果について検討中である.
索引用語 自己免疫性肝炎, 抗HLA抗体