セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝疾患の基礎・臨床の最前線

タイトル 消PD4-3:

門脈域浸潤形質細胞の免疫組織染色を用いた自己免疫性肝疾患の再評価

演者 阿部 和道(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科)
共同演者 高橋 敦史(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科), 大平 弘正(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科)
抄録 【目的】 原発性胆汁性肝硬変(PBC)の特殊な病態として,自己免疫性肝炎(AIH)の病態を併せ持つ,PBC-AIH overlap症候群が存在し,その診断に苦慮する例が少なくない. また近年,自己免疫性肝疾患における門脈域浸潤形質細胞のIgG,IgMの免疫組織染色(免染)が診断に有用と報告されている. 今回我々は,自験例の自己免疫性肝疾患におけるこれら免染を行い検討した【対象と方法】当科で診断されたAIH 14例,PBC 14例,overlap 5例を対象とした. 診断時の肝生検組織を用い,PBC,overlapの肝炎性変化(HA)には中沼分類を用いた. さらに,抗ヒトIgG抗体,抗ヒトIgM抗体,形質細胞に特異的な抗ヒトCD138抗体による免染を行い,強拡大視野でCD138陽性細胞浸潤する門脈域を抽出し,IgG,IgM陽性細胞数を数えて検討した. なお,overlapの診断はParis criteriaを用いた【結果】患者背景(AIH / PBC / overlap)は,平均年齢59.4 / 53.9 / 51.4歳,男女比3:11 / 4:10 / 2:3,診断時臨床検査: ALT 646.7±568.6 / 78.6±41.9 / 985.6±1324.8 IU/L,ALP 376.2±134.2 / 558.2±328.7 / 440.2±32.0 IU/L,IgG 2646±793.0 / 2108±656.2 / 2767±885.5 mg/dL,IgM 201±91.2 / 741±311.3 / 628±334.3 mg/dL. 肝組織像は,AIHは全例でinterface hepatitisと門脈域の炎症細胞浸潤を認めた. PBCのHAは,HA0 ; 28.6%,HA1 ; 35.7%,HA2 ; 28.6%,HA3 ; 7.1%,overlapのHAは,HA0 ; 0%,HA1 ; 20%,HA2 ; 60%,HA3 ; 20%であった.免染における強拡大視野でのIgG陽性細胞およびIgM陽性細胞浸潤の分布は,AIHではIgG優位10例(71.4%),IgM優位0例,同等4例(28.6%),PBCではIgG優位0例,IgM優位1例(7.1%),同等13例(92.9%),overlapではIgG優位1例(20%),IgM優位0例,同等4例(80%)であった. また,overlapでIgG優位例は,中沼分類のHA3であった. IgM/IgG比は,PBCがAIH,overlapと比較して有意に高値であった(0.2 / 2.0 / 0.3 , p<0.005)【結語】自己免疫性肝疾患における門脈域浸潤形質細胞のIgG,IgMの免染パターンは疾患によって異なっていることが示唆された
索引用語 自己免疫性肝疾患, 形質細胞