セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝疾患の基礎・臨床の最前線

タイトル 肝PD4-4:

急性発症型自己免疫性肝炎の臨床的特徴

演者 阿部 雅則(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
共同演者 眞柴 寿枝(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学), 恩地 森一(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
抄録 【目的】臨床的に急性肝炎像を呈する自己免疫性肝炎(AIH)症例には,1)組織学的に門脈域の線維化と高度な細胞浸潤があり,慢性肝疾患の経過中に急性増悪として発症したと思われる症例(急性増悪期)と,2)慢性肝疾患の組織所見がないか軽微で,急性肝炎の病理所見が主体の症例(急性肝炎期)の2つの病態が存在している.今回,多施設共同研究により,急性発症型AIH症例の臨床的特徴を解析した.【方法】「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班に所属する22施設において2007年から2011年に診断された急性発症型AIHの180例.急性発症型AIHの定義は,1)過去に肝機能異常の指摘がない,2)ウイルス,薬物の関与が否定的,3)肝組織像で急性肝炎期または急性増悪期と診断した症例とした.診断時平均年齢は56.4±17.0歳,男女比は1:5.1.急性肝炎期例の臨床像を急性増悪期例と比較した.【成績】1)診断時ビリルビン,AST,ALT値は急性肝炎期と急性増悪期では差がなかった.2)血清IgG値は急性肝炎期(2251±831mg/dl)では急性増悪期(3155±1413mg/dl)に比し有意に低かった(p=0.0004).3)抗核抗体陽性(80倍以上)の割合は急性肝炎期 64.2%,急性増悪期 91.7%と急性肝炎期で有意に低かった(p=0.0078).4)急性増悪期は全例がステロイド治療に反応した.一方,急性肝炎期では11.9%がステロイド治療に対する反応が不良であった.5)予後が判明している症例のうち,急性肝炎期では20例(16.1%)が死亡または移植となり,その死因は肝不全 ,感染症など肝疾患および治療に関連するものであった.これらの症例では,診断開始時のビリルビン 18.3±10.6 mg/dl,PT 37.6±26.9%と進行例が多く,生存例に比し抗核抗体陽性例(84.2%)が多かった.(p=0.039)【結論】急性肝炎期AIH症例では診断困難で予後不良な症例も存在する.急性発症型AIHの診断・治療指針の作成が必要と考えられる.【謝辞】本研究は「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班の研究成果であり,調査に御協力頂いた先生方に深謝します.
索引用語 自己免疫性肝炎, 急性発症