セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝疾患の基礎・臨床の最前線

タイトル 肝PD4-5:

自己免疫性肝炎における適切な副腎皮質ステロイド投与方法

演者 三宅 康広(岡山大大学院・消化器・肝臓内科学)
共同演者 山本 和秀(岡山大大学院・消化器・肝臓内科学), 恩地 森一(愛媛大大学院・先端病態制御内科学)
抄録 【目的】自己免疫性肝炎(AIH)における適切な副腎皮質ステロイド(CS)投与方法を明らかにする.【方法】対象は,1999年国際診断基準において疑診または確診とされた15歳以上のAIH 203例中,初期治療としてCS投与が行われ解析可能であった164例.なお,初期治療:初回ALT正常化までに行われた治療,ALT正常化:ALTが30 IU/l以下に改善,再燃:治療によりALTが30 IU/l以下に改善後に60 IU/l以上へ上昇,と定義した.【成績】年齢は中央値で60歳,女性が88%.肝組織では急性肝炎が22%.CS開始時では,中央値でTBil 1.5 mg/dl,ALT 270 IU/l,IgG 2411 mg/dl,86%でANAまたはASMA陽性.ALT正常化率は,CS治療開始後24週で82%,52週で90%.全体では,CS導入量とCS開始時ALT値に正の相関が認められ,CS導入量とALT正常化時期に有意な関連を認めなかった.次に,プレドニゾロン(PSL)導入量が0.4 mg/kg/day以下または1.0 mg/kg/day以上,ステロイドパルス施行例,治療開始時ALT 1000 IU/l以上に該当する症例を除外した92例で検討した.多変量解析でALT早期正常化に関連する因子を解析したところ,PSL導入量のみが有意な因子であった(ハザード比 7.31;95%CI 1.10-48.5).特に,PSL導入量が0.8 mg/kg/day以上の症例において,ALT正常化が有意に早期であった.治療開始時ALT 60-300 IU/lの症例では,PSL導入量が0.55 mg/kg/day以上の症例でALT正常化が有意に早期であった.また,再燃に関連する因子は,PSL導入後にALT値が初めて正常化した時のPSL投与量であり(ハザード比 0.021;95%CI 0.001-0.38),0.2 mg/kg/day以上投与されていた症例で再燃が有意に少なかった.【結論】CS投与方法が,トランスアミナーゼ早期正常化及び再燃予防に関連していた.今後,わが国のAIH診療に有用な治療指針の作成が必要である.【謝辞】「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班の諸先生方に陳謝する.
索引用語 自己免疫性肝炎, 治療