セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝疾患の基礎・臨床の最前線

タイトル 肝PD4-6:

自己免疫性肝炎の再燃を繰り返す因子の解析

演者 吉澤 要(国立信州上田医療センター・地域医療教育センターDELIMITER信州大・消化器内科)
共同演者 松本 晶博(信州大・消化器内科), 梅村 武司(信州大・消化器内科)
抄録 【背景・目的】我が国の自己免疫性肝炎(AIH)は,副腎皮質ステロイド治療により一旦寛解すれば,一般日本人と同程度の生命予後が期待されることを報告した.この中で,2回以上の再燃を繰り返すことが唯一予後悪化の要因であった.再燃を繰り返す要因については,遺伝的要因,発症時の検査値や組織などと,人為的な因子,すなわち,治療法などが考えられる.今回,再燃の要因の解析を行い,特に人為的な要素の重要性を明らかにすることを目的とした.【方法】症例は,当院および関連施設で,1年以上長期に観察している,国際診断基準で疑診以上の71例とした.2回以上の再燃例12例と,1回再燃8例と再燃なしの51症例を比較した.HLA Class II,性,診断時の年齢,組織や検査値,人為的要因として,初期投与量,減量法,維持量投与(あるいは初回再燃)までの期間と総投与量および,再燃患者において再燃時の増量法について検討した.【成績】HLA DRについて検討したが,有意差はなかった.年齢,性,組織,検査値などにも有意差は認めなかった.人為的な因子の解析は,初期投与量に関しては,両者とも差はなかった.減量法では,再発例では維持量まで減量あるいは再燃まで平均17週に対して,無再発例では,平均28週であった.維持量までのステロイド総投与量は再燃例平均2,230 mgに対して,無再燃例平均3,240 mgであった.再燃時のステロイド投与量では2回以上再燃群では10-20 mg/day,以降再燃しない群では20 mg/dayに増量し,減量も慎重に行い,維持療法を続けている.【考察】AIHのステロイド治療に関しては,初期投与量の指針は検討されているが,減量法に関しては個々の医師に依存している面が強い.今回,再燃を繰り返す人為的な要因として,早期の減量,不十分な総投与量,再燃時の不十分な増量が明らかとなった.【結論】再燃を繰り返さないようにするためには,初期治療のみでなく,適切な減量法,再燃時の増量法,維持療法についてもガイドラインが必要と思われる.
索引用語 自己免疫性肝炎, ステロイド治療