セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝疾患の基礎・臨床の最前線

タイトル 肝PD4-7:

自己免疫性肝炎に対する免疫抑制剤の至適用量に関する検討

演者 鈴木 義之(虎の門病院・肝臓センター)
共同演者 小林 万利子(虎の門病院・肝臓センター), 熊田 博光(虎の門病院・肝臓センター)
抄録 【目的】自己免疫性肝炎(AIH)の治療の長期化に伴い糖尿病や骨粗鬆症を合併し,治療に難渋する症例も増加している.このような問題を解決するため当院では,5年前より一定条件を満たした症例を対象に免疫抑制剤の漸減や中止を試みた前向き研究を行っており,いかに有効な治療を行うかを検討した.【方法】1979年から2012年までの33年間に当院でAIHと診断された症例は192例存在する.これらの症例を対象にプレドニン(PSL)を一日当たり10mg以下で2年以上ALTかつIgGの正常化を維持した症例を抽出し,同意を得た上でさらに漸減する群と中止する群に分けてその後の予後につき検討した.今回の検討においては非定型症例とUDCAのみの治療症例は除外し,3年以上の経過観察を行っている112例につき解析を行った.診断は1999年の国際診断基準のscoringと2008年の簡易systemによるscoringを用いて行った.【成績】平均観察期間は中央値16年(3~33年),全症例112例中,上記の条件を満たした症例は67例(60%)存在した.このうち中止を希望し実際に漸減後中止した症例は16例存在した.中止後,中央値2年間の経過で再燃は9例あり,中止が維持できた症例は7例であった.再燃例の特徴は腹腔鏡所見で典型的な所見を呈し,組織でsubmassive necrosisや形質細胞浸潤の目立つ症例であった.また,1999年のscoringでdefiniteと診断された症例が多かった.また漸減を希望した症例は41例存在し,10mgから1mgづつ漸減していったが,5mg以下まで漸減した症例26例のうち15例は再燃し,PSLの増量を行った.両群を含め再燃に関わる要因は診断時の背景因子で検討すると,IgG (γグロブリン) 高値(P=0.037),抗核抗体高値(P=0.046),AIHscore(P=0.047)が有意な因子であった.【結語】AIHに対する免疫抑制療法においては組織学的に典型的な変化を認めIgGや抗核抗体が高値のdefinite症例はPSL5mgへの減量は困難であると判断される.再燃を抑え病期の進行を食い止めるにはPSL以外の治療薬を含めた治療法を検討していくことが肝要であると考える.
索引用語 自己免疫性肝炎, 免疫抑制療法