セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝疾患の基礎・臨床の最前線

タイトル 肝PD4-9:

原発性胆汁性肝硬変の胆管病変におけるautophagy異常, ミトコンドリア蛋白発現亢進と細胞老化の関与

演者 佐々木 素子(金沢大大学院・形態機能病理学)
共同演者 中沼 安二(金沢大大学院・形態機能病理学)
抄録 【目的】原発性胆汁性肝硬変(PBC)は, 特異な胆管病変と血清抗ミトコンドリア抗体(AMA)などのミトコンドリア抗原に対する免疫異常を特徴とする. しかし, AMAと胆管病変の発生機序の関連については十分解明されていない.私どもはPBCの病態形成におけるautophagy異常, ミトコンドリア抗原PDC-E2発現と細胞老化の関与を検討した.【方法】対象はPBC症例(n=47)と原発性硬化性胆管炎など対照疾患肝, 正常肝(n=68) の生検, 切除肝. 免疫組織化学的にautophagy関連分子LC3, p62, PDC-E2, 老化指標p16INK4a, p21WAF1/Cip1, 老化関連分泌因子CCL2, CX3CL1の発現と胆管病変の関連を検討した. また, 培養胆管細胞に血清除去などのストレスを加えてautophagy, 細胞老化の発生, PDC-E2発現の変化や老化関連分泌因子産生を検討した. 【成績】PBCの肝内小型胆管では胆管炎部を中心に,他疾患と比較して有意に高率に,粗顆粒状のPDC-E2発現亢進, LC3陽性autophagosome蓄積, autophagy異常を示すp62蓄積を認めた. 2重免疫蛍光染色では, 粗顆粒状のPDC-E2発現はミトコンドリアのautophagyによることが示唆された. また, PBCの胆管炎部の胆管上皮は疾患特異的に細胞老化を示し, 同部ではCCL2, CX3CL1発現亢進をみた. ストレスを加えた培養胆管細胞では,ミトコンドリア抗原を含むautophagosomeの蓄積と細胞表面の抗原表出が生じた. また, autophagy阻害は細胞老化を抑制した. 老化細胞は, CCL2, CX3CL1発現亢進を介して単球系細胞の遊走能を亢進した. 【結論】PBCでは胆管上皮のautophagy異常がPDC-E2の異常発現を介して, 免疫病態形成に関与する可能性が示唆された. また, autophagy異常により生じる胆管細胞老化は, 老化関連分泌因子産生を介して免疫病態を増悪している可能性が示唆された.
索引用語 原発性胆汁性肝硬変, autophagy