セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝疾患の基礎・臨床の最前線

タイトル 肝PD4-10:

原発性胆汁性肝硬変における末梢血CD4+T細胞のmicroRNA発現動態の解析

演者 中川 良(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科DELIMITER東京大医科学研究所・先端ゲノム医学)
共同演者 加藤 直也(東京大医科学研究所・先端ゲノム医学), 銭谷 幹男(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】原発性胆汁性肝硬変(PBC)の発症機序は明らかでない.近年,種々の自己免疫性疾患におけるmicroRNA(miRNA)動態が注目され,PBCでも末梢血単核球を用いた解析が報告された.今回,我々はPBCの病態形成で中心的な役割を占めるCD4+T細胞におけるmiRNA動態解析を行った.【方法】PBC群(n=7),健常群(n=7)の末梢血CD4+T細胞より得られたtotal RNAを用いmicroarrayによりmiRNA発現動態を網羅的に解析し,さらにPBC群で特異的発現を認めたmiRNAの発現を定量的real-timePCR(qRT-PCR)により再評価した.qRT-PCRでも有意差を認めたmiRNAの標的遺伝子を予測し,自己免疫反応に関連する遺伝子を抽出した.それら標的遺伝子の発現をqRT-PCRで評価し,miRNA発現と相関のある標的遺伝子とmiRNAの結合をLuciferase 3’UTR reporter assayを用いて確認した.【成績】健常群に比しPBC群では2種のmiRNAが高発現し,13種のmiRNAが低発現していた(p<0.05,fold change>1.2).qRT-PCRによりPBC群におけるmiR-181a-5p,miR-361-5p,miR-374b,miR-425の有意な発現低下が確認された(p<0.05).これらmiRNAの標的遺伝子から7つの遺伝子を抽出しqRT-PCRにより解析したところ,NRAS,TNFAIP3,TNFSF9,IL-10,IL-11,BIRC3,DUSP5がPBC群で有意に増加していた(p<0.05).さらにLuciferase assay解析によりmiR-425とNRASの結合が確認できた.【結語】PBCのCD4+T細胞における特異的miRNA発現を明らかにした.PBCでの発現低下を認めたmiR-425の標的遺伝子で,CD4+T細胞での発現増加が示され,miR-425との結合が確認されたNRASはT細胞のFOXP3発現に関わると報告されており,PBCの免疫病態形成に関わる可能性が示された.
索引用語 PBC, miRNA