セッション情報 パネルディスカッション4(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝疾患の基礎・臨床の最前線

タイトル 消PD4-12:

原発性硬化性胆管炎の短期的予後予測に有用な検査項目

演者 渡邉 健雄(東京大・消化器内科)
共同演者 平野 賢二(東京大・消化器内科), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【背景と目的】
原発性硬化性胆管炎(PSC)において,ALPが正常値の1.5倍以下に維持されている症例では予後がよいと報告されている.PSCをフォローするうえでどのような血液検査項目が,短期的な予後予測に有用であるか明らかにすることを目的とした.
【方法】
自験例(一部他施設)で1年以上血液所見の追えた73例(平均発症年齢41歳,男性40例,女性33例,平均全観察期間 8.7年)で,ALP,Alb,PT-INR,T.Bil,AST,γGTPの推移と肝臓関連イベント(肝不全,静脈瘤破裂,生体肝移植,脳死肝移植認定,胆道癌発症)について検証した.イベントありの症例についてはイベント発生前1年間,イベントのない症例については最終観察日以前の1年間の上記血液検査結果について調べた.
【結果】
肝臓関連イベントは37例(51%)で認められた.ALPが正常上限の1.5倍以下を維持できている症例(イベント発生前ないし最終観察日以前の1年間で1.5倍以下を維持)では,維持されていない症例と比較し,UDCA治療歴の有無には有意差は無かった(68%[13/19]vs88%[45/53], Fisher検定,p=0.0739).肝臓関連イベントは有意に少なかった(5%[1/19]vs66%[35/53], p<0.0001).Alb,PT-INR,T.Bil,AST,γGTPについても適切なカットオフ値を用いることでイベント発生数に有意差が認められた.しかしながら各項目についてROC曲線のAUCを比較するとその精度には差がありAlb,PT-INR,T.Bil,,ALP,AST,γGTP(AUC値では0.90,0.89,0.88,0.82,0.78,0.55)順で優れていた.AUCの高いAlbについてみると,Alb≧2.7g/dl維持群では非維持群より有意にイベントが少なく〔23%[10/43]vs96%[24/25], p<0.0001〕,ALPが陰性的中率の高いことに対しAlbでは陽性的中率の高さが目立った.
【結論】
既報通りALP正常1.5倍以下維持群では短期予後が良好であることが確認された.また,AlbやPT-INRが予後予測においてALP以上に有用である可能性が示唆され,これらの因子にも注意が必要と考えられた.
索引用語 PSC, ALP