セッション情報 パネルディスカッション5(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

非侵襲的肝病態評価法の適応と限界

タイトル 肝PD5-1:

非アルコール性脂肪性肝疾患におけるIrisinの臨床的な意義

演者 横尾 健(新潟大大学院・消化器内科学)
共同演者 須田 剛士(新潟大大学院・消化器内科学), 青柳 豊(新潟大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】NAFLDを対象として,継続的な運動により筋細胞から分泌され白色脂肪細胞を褐色化することにより熱産生を促進する作用が示されているIrisinの血中濃度を測定し,各種臨床病理学的なデータとの関連からその臨床的な意義を明らかとする.【方法】HBsAg陰性,anti-HCV陰性で機会飲酒以上のアルコール多飲を認めず,腹部超音波検査上肝腎コントラスト陽性の肝障害症例59例の血中Irisin濃度をELISAで定量した.音響放射圧を用いた肝内せん断弾性波速度(SWV),ならびに各種臨床データとの関連を統計学的に解析した.SWVは各区域で3回測定し,その平均値を用いた.【成績】対象は,男性28例,女性31例,年齢 59歳(Interquartile range:41-71),BMI 25.8 kg/m2(22.9-28.5)であった.SWVの中央値は1.67(1.20-2.61)m/sec,変動係数は0.18(0.15-0.31)であり,当院で組織学的な線維化ステージとSWVとの関係が解析された103例の結果から,F2-3相当であった.Irisinの中央値は112.6(90.6-130.3)ng/mlで,男(114.2: 89.2-133.3)女(111.8: 94.1-130.3)間に有意差が認められなかった一方で(p=0.78),SWVと有意な負の相関関係を示し(p=0.0064,spearman r=-0.35),F0-2(117.8: 103.8-140.0)とF3-4(105.2: 84.4-124.6)間で有意な差異が認められた(p=0.047).また左葉と右葉を比較した結果,左葉でより高い相関が認められた(左葉:p=0.0034,r=-0.38,右葉:p=0.039,r=-0.27).年齢(p=0.17),BMI(p=0.71),ALT(p=0.073),ChE(p=0.061),PT-INR(p=0.95)とは有意な相関性を示さなかった.【結論】これまでの当院における経時的なSWVの測定結果は,NASHにおけるSWVの改善が左葉側から生じることを示唆している.IrisinはSWV,特に肝左葉のSWVと負の相関性を示しており,NAFLDの改善因子として働いている可能性が示唆された.Irisinを含めたNAFLD/NASH治療法開発において,時空間的に複数回の評価判定を実施することは極めて重要であり,音響放射圧を用いた肝硬度測定の有用性が示唆された.
索引用語 音響放射圧, 肝硬度