セッション情報 |
パネルディスカッション5(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
非侵襲的肝病態評価法の適応と限界
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タイトル |
肝PD5-2:血清soluble CD14はNASHにおける肝内炎症を反映する
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演者 |
小川 祐二(横浜市立大附属病院・消化器内科) |
共同演者 |
今城 健人(横浜市立大附属病院・消化器内科), 中島 淳(横浜市立大附属病院・消化器内科) |
抄録 |
【目的】肝内炎症は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)における病態進展の危険因子であり,その程度を評価することは重要である.我々はこれまでに,肥満に伴う高レプチン血症がlipopolysaccharide(LPS)の共受容体であるCD14の発現を肝クッパー細胞において誘導し,LPSに対する反応性を亢進させることで肝内の炎症や線維化を惹起し,NASH病態の進展に寄与することを報告した.このCD14は細胞膜に発現するmembrane CD14(mCD14)と血中に存在するsoluble CD14(sCD14)に分けられる.今回,非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)患者におけるsCD14と肝病態の関係性について検討した.【方法】2007年4月~2012年3月までに当院にて肝生検で診断した110人のNAFLD患者(Not NASH=48人,NASH=65人),及び21人の健常者を対象とした.NASH診断はMatteoni分類で行い,活動性評価にはNASH activity scoreを用いた.血清sCD14は ELISA Kitで測定した.in vitroではマウスマクロファージのcell lineであるRAW264.7細胞を用いた.【成績】sCD14はControl群24.3ng/dl,NAFL群27.5ng/dl,NASH群32.2ng/dlで,NASH診断能はAUC=0.796(Cut off値:29.5ng/dl,感度79.1%,特異度73.5%)であった.sCD14とNASは有意な相関関係を示し(r=0.354,p=0.004),中でも肝内炎症は最も強い相関関係を示した(r=0.498,p<0.001).さらに,肝内炎症と関与しうる年齢,性別,BMI,ALT,CRP,sCD14の多変量回帰分析では,sCD14のみがp=0.0116と有意差を認め,オッズ比8.853であった.sCD14による高度炎症(grade 2-3)と軽度炎症(grade 0-1)の判別能はAUC=0.752(Cut off値:29.5ng/dl,感度78.2%,特異度72.4%)であった.また,血清sCD14と肝mCD14のmRNA発現は有意な正の相関を示した(r=0.552,p<0.001).in vitroでは,RAW264.7細胞にLPSを投与すると上清でのsCD14濃度は増加した.【結論】sCD14は,NASH患者の拾い上げのみならず肝内炎症の非侵襲的バイオマーカーとなりうる.sCD14は肝クッパー細胞のmCD14がsheddingされることにより増加する可能性が示唆された. |
索引用語 |
NASH, soluble CD14 |