セッション情報 パネルディスカッション5(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

非侵襲的肝病態評価法の適応と限界

タイトル 消PD5-3:

NAFLDにおいて血小板数 (PLT) とAST/ALT比 (AAR) の組み合わせ (PAAR index) により線維化進展例を除外できる

演者 角田 圭雄(京都府立医大大学院・消化器内科学)
共同演者 田中 斉祐(市立奈良病院・消化器肝臓病センター), 伊藤 義人(京都府立医大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪肝疾患 (NAFLD) において線維化進行例を診断できる簡便な指標の確立が期待されている. 血小板数 (PLT), AST/ALT ratio (AAR)の組み合わせにより, 簡便に線維化進行例を除外できることを見出した. 【方法】組織学的にNAFLDと診断した 259例 (男:女=134: 125, 年齢 54.0±15.9 歳) を対象とした. 線維化の程度はBrunt分類により評価し, Stage3以上を線維化進展例とした. Stage 0-2とstage 3-4の鑑別においてROC曲線を作成し, ROC曲線下面積 (AUROC) を算出した. 【成績】Stageの内訳はstage 0/1/2/3/4: 120/71/39/21/8. Stage3以上は11%で, AUROCはPLT :0.784, AAR: 0.765, 年齢: 0.747, PT: 0.712, Alb: 0.687, AST: 0.648, body mass index: 0.560, ALT: 0.540の順でPLT, AARの有用性が示唆された. PLT, AARのカットオフ値(COI)はそれぞれ19.5万/ μL(感度72%, 特異度75%), 0.80(感度72%, 特異度74%)であった .ロジスティック回帰分析では, AAR> 0.80 (odds ratio [OR]: 3.33, 95% confidence interval [CI]: 1.23-8.99, p=0.018), PLT 19.5万/ μL (OR: 2.08, 95% CI: 1.28-3.38, p=0.003) のいずれも有意な独立因子であった. そこでPLT, AARのCOIにより4群に分けて検討すると, AAR<0.80 かつ PLT>19.5万/ μLの143例においてstage 3以上の陰性的中度98%と良好であり, これらを肝生検の適応外とすると55.2% (143/259) が肝生検を回避できる . 一方, AAR > 0.80 かつ PLT<19.5万/ μLにおいてはstage 3以上の陽性的中度37%と他の3群に比して有意に高率であった (p<0.0001).【結論】AAR<0.80 かつ PLT >19.5万/ μLのNAFLD例はstage3以上の可能性は極めて低く, 肝生検を回避できる. PLT, AARのみで決定され, 健診や日常臨床のレベルで容易に適応できる利点がある.今後, 多施設共同によるvalidation studyが必要である.
索引用語 血小板数, AST/ALT比