セッション情報 ワークショップ8(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患と胆汁酸

タイトル 消W8-3:

GPR40の脂肪酸センシングと胆汁酸

演者 山本 明子(名古屋大大学院・健康栄養医学)
共同演者 石黒 洋(名古屋大大学院・健康栄養医学)
抄録 【目的】胆汁酸は小腸内の脂肪滴を乳化して、脂肪酸やモノグリセリドを含んだ混合ミセルを形成し、消化・吸収に役立っている。一方、GPR40は中鎖~長鎖脂肪酸の受容体であり、膵β細胞に発現するほか、上部小腸の消化管内分泌細胞に発現し脂肪摂食によるcholecystokinin(CCK)分泌を担うと考えられている。in vivoにおいて、胆汁酸は血中CCKの分泌を抑制すると報告されているが、そのメカニズムについて詳細な検討はされていない。今回我々は、臨床応用が期待できるGPR40の脂肪酸センシングに胆汁酸が及ぼす影響を解析した。【方法】マウスのGPR40をPC12細胞に遺伝子導入した安定発現系(PC12-mGPR40細胞)を作成し、fura-2を用いて細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)を測定した。ラウリン酸(C12脂肪酸)とコール酸(胆汁酸)が[Ca2+]iに及ぼす影響をコントロール(PC12-WT細胞)と比較した。【結果】C12(500μM)のみを投与した場合には、PC12-mGPR40細胞、PC12-WT細胞ともに数分毎に反復する一過性の[Ca2+]i上昇が見られた。C12とコール酸(30μM)を同時投与すると、PC12-WT細胞では、反復する一過性の[Ca2+]i上昇のみが見られ、[Ca2+]i上昇の周波数は0.001(Hz)未満の細胞が92.7%を占めていた。PC12-mGPR40細胞ではCa2+ oscillation(約1分周期)が起こり10分以上持続した。また、[Ca2+]i上昇の周波数は0.001(Hz)未満の細胞が14.7%、0.001以上0.01(Hz)未満の細胞が51.8パーセント、0.01(Hz)以上の細胞が34.2パーセントを占めていた。Ca2+ oscillationの発生中にprotein kinase A阻害剤のH89(30μM)を投与するとCa2+ oscillationは消失したが、一過性の[Ca2+]i上昇は残存した。PC12-mGPR40細胞に、C12とdibutyryl cAMP(500μM)を同時投与すると、Ca2+ oscillationが見られた。【結論】GPR40発現細胞において、C12脂肪酸は反復する[Ca2+]i上昇を引き起こし、胆汁酸との同時投与は[Ca2+]i上昇の周波数を高めてCa2+ oscillationを引き起こす。胆汁酸は、細胞内cAMPの上昇を介してGPR40による脂肪酸センシングを修飾する。
索引用語 胆汁酸, 脂肪酸