セッション情報 パネルディスカッション5(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

非侵襲的肝病態評価法の適応と限界

タイトル 肝PD5-5:

BMIPP脂肪酸シンチグラフィのNASH診断における有用性:どういう脂肪肝を生検すべきか?

演者 野崎 雄一(国立国際医療研究センター・消化器科)
共同演者 南本 亮吾(国立国際医療研究センター・放射線科核医学), 柳瀬 幹雄(国立国際医療研究センター・消化器科)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者は急増しており,膨大な症例数の脂肪肝患者の中から,肝生検を要する進行性の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者を効果的に抽出することが急務とされる.そこでNASH診断における非侵襲的検査として,123I-BMIPP (beta methyl-iodophenyl-pentadecanoic acid)を用いた脂肪酸代謝シンチグラフィの有効性を検討する.【対象と方法】肝生検にて病理学的診断に至ったNAFLD患者14名(男/女=11/3(人),平均年齢49(歳))を対象とした.14名の内訳は,単純性脂肪肝(SS)4名,早期(Brunt病期分類Stage1-2)NASH(eNASH)6名,進行(Stage3-4)NASH(aNASH)4名であった.BMIPP 111MBqを急速静注後,two head gamma cameraを用いて60分後までの肝,心左室における脂肪酸動態を画像化し,線維化進行度との相関を解析し有用な指標を探索した.【成績】1) 症例毎の脂肪酸シンチグラフィデータを複数の指数関数と変数によるカーブフィッティングをおこない,各群間でカーブパターンを比較すると,eNASH群はSS群に比してBMIPPの肝内取り込みが遅延し,取り込み後の代謝動態も異なることが示唆された.2) 症例毎のフィッティング関数における3つの変数を説明変数とするロジスティック回帰分析から回帰モデルを作成し,症例毎の真の陽性確率を算出した.本検討の症例数ではROC曲線下面積(AUC) 0.98という良好な成績を得た.【考察】NAFLD症例の中でss群とeNASH群を鑑別する非侵襲的手段として123I-BMIPP脂肪酸シンチグラフィの有用性が示唆された.有用性が示されているNAFICスコアと併用することで,肝生検を施行すべきeNASH症例をより高い精度で抽出できることが期待される.今後更に多くの症例での検討を要する.
索引用語 NASH, 非侵襲的検査法