セッション情報 パネルディスカッション5(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

非侵襲的肝病態評価法の適応と限界

タイトル 肝PD5-8:

C型慢性肝炎におけるInterferon-Stimulated Genes 発現誘導の機序と測定に関する検討

演者 向井 香織(大阪大・消化器内科)
共同演者 宮城 琢也(大阪大・消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大・消化器内科)
抄録 【背景・目的】インターフェロン誘導遺伝子 (Interferon-stimulated genes, ISGs) はInterferon (IFN) によって発現が誘導される遺伝子群で自然免疫応答に深く関与する.C型慢性肝炎 (CHC) において肝組織で種々の程度にISGsが誘導されており,抗ウイルス治療効果との関連やIL28B SNPとの関連を示唆する報告がなされている.しかし,その誘導機序や病態への関与について十分に明らかにされていない.一方で, Natural killer (NK) 細胞はISGs発現誘導に感受性が高いことが報告されている.今回我々は,CHC患者由来の生体試料を用いてISGs発現誘導の機序・意義・非侵襲的な測定法について検討した.【方法】CHC患者(遺伝子型1型・高ウイルス量)26名を対象とし末梢血単核球 (PBMC) と余剰肝生検組織を採取した.PBMCと肝組織において,ISGs,type I IFN ,type II IFN ,type III IFN,それぞれの遺伝子発現を定量的PCR法にて評価した.またPBMCおよびNK細胞サブセットのSTAT1蛋白発現量をFACSで評価した.【成績】(1) 肝組織のISGs発現量とPBMCのISGs発現量とは有意な相関を認めなかった.(2) 肝組織のISGs発現量は肝組織のtype I IFN発現量およびtype III IFN発現量と有意な相関を認めた.Type II IFN発現量とは有意な相関を認めなかった.(3) ISGsのひとつであるSTAT1に関して,肝組織のSTAT1発現量は肝組織のその他のISGs発現量と有意な相関を認めた.(4) 肝組織のSTAT1発現量はPBMCのSTAT1蛋白発現量とは有意な相関を認めなかったがNK細胞のSTAT1蛋白発現量とは有意な相関を認めた.(5) 肝組織のISGs発現量とIL28B SNPとの有意な関連は認めなかった.【結論】肝組織のISGs発現誘導にはtype I/III IFNが関与していることが示唆された.肝組織のISGs発現量はIL28B SNPと独立して治療抵抗性と関連していることが示唆された.肝組織のISGs発現量は末梢血NK細胞のSTAT1発現量に反映されており,末梢血を用いた解析から肝組織ISGs発現量の程度が評価できる可能性が示唆された.
索引用語 C型慢性肝炎, Interferon-Stimulated Gene