セッション情報 パネルディスカッション5(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

非侵襲的肝病態評価法の適応と限界

タイトル 消PD5-11:

日常臨床における超音波エラストグラフィ(RTE vs FibroScan)について

演者 森川 浩安(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学)
共同演者 打田 佐和子(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学), 河田 則文(大阪市立大大学院・肝胆膵病態内科学)
抄録 【背景】肝線維化判定では非侵襲的な評価法が「侵襲的」肝生検に変わりつつあり,その筆頭として超音波エラストグラフィがある.エラストグラフィはStrain imagingとShear wave imagingに大別でき,両者の代表として,Real time tissue elastography (RTE)とTransient elastography(FibroScan, FS)がある.現在までに我々は両検査の成績を報告してきた(J Gastroenterol, 2011).今回,入院時の日常検査として施行した症例を対象として報告する.【方法】対象は2010年10月から2013年2月に当科に入院され,同意の得られた727症例(肝細胞癌255例,C型肝炎245例,B型肝炎55例,NASH/NAFLD49例,AIH/PBC42例,急性肝炎15例,膵・胆道系疾患16例とその他50例)959検査である.使用機種は,RTEはEUB-8500,Ascendusを,FSはFibroScan502を用いた.計測は全例,同一の検査技師にて同時刻に施行し,測定部位は右肋間より観察できる右葉の同一部位とした.測定方法は既報通りである.【成績】1)RTEにおける測定不能例は44例(4.6%)で主に肥満が原因であった.FSにおいては41例(4.3%)が測定不能,43例が不成功(4.5%)で肥満と腹水が主な原因であった.2)両検査間の相関[RTE項目;Mean,Area,SD対FS]は,r=-0.612,r=0.589,r=0.276であった(n=883).3)検査後2日以内に実施できた肝生検結果との比較では,肝硬変(F4,METAVIR)診断能(AUC)はMean 0.78,Area 0.77,SD 0.68とFS 0.84であった(n=187).F0-2のAUCはMean 0.79,Area 0.77,SD 0.70とFS 0.87であった.【結論】現在までの報告成績と比べると,RTEにて測定不能例が存在することがわかり,FS不能例との重複は半数であった.また,両者の相関は症例数の増加にて上昇したが,高い相関とは考えられなかった.生検結果と比較した線維化診断能は,異種要因の症例増加により,RTEでは低下し,またRTEに比してFSが総じて高かった.今後は両検査の基本原理を理解した上での検査の組み合わせや疾患による選択が必要と考えられた.
索引用語 エラストグラフィ, 肝線維化