セッション情報 | パネルディスカッション5(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)非侵襲的肝病態評価法の適応と限界 |
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タイトル | 消PD5-12:各種超音波エラストグラフィによる肝線維化診断 |
演者 | 矢田 典久(近畿大・消化器内科) |
共同演者 | 萩原 智(近畿大・消化器内科), 工藤 正俊(近畿大・消化器内科) |
抄録 | 【はじめに】超音波エラストグラフィには,組織の相対的歪みの度合いをカラー表示するReal-time Tissue Elastography (RTE),剪断波伝播速度を測定するTransient Elastography (TE),Virtual Touch Quantification (VTQ),ShearWave Elastography(SWE)等があるが,モダリティにより測定値も異なる.同一症例に対して検査を行う事で,これらの違いを検討した. 【方法】びまん性肝疾患198例に対してRTE,TE,VTQ,SWEを同日に行い,肝生検による肝線維化診断と比較した.RTEはLF Indexで評価した.SWE はkPaで評価し,VTQもヤング率E[kPa]=3ρVs[m/s] 2を(ρ=1と近似)用いてkPaに変換しVTQ_kPaとして評価した. 【結果】LF IndexはTE(r=0.595, p<0.001),VTQ_kPa,SWEと有意な相関関係を認めた.SWEは,TE(r=0.713, p<0.001),VTQ_kPa(r=0.790, p<0.001)と有意な相関性を呈した.VTQ_kPaとTE間もr=0.688, p<0.001と有意な相関性を呈した.また,SWE=0.968×VTQ_kPa+0.32=0.928×TE+0.72の相関関係が成立していた.一方,炎症・黄疸などの高い症例ではLF Indexに比べ,TE,VTQ,SWEは高値であったが,治療により速やかに低下した.また,肝臓まで3cm以上ある症例ではTEは測定できなかった.また,減衰の強い症例ではRTEでは青く表示され,SWEでは均一な信号が得られずに斑模様になる傾向にあった.一方,VTQは全例測定可能であった. 【結語】剪断波伝播速度は組織弾粘性に相関し肝線維化だけでなく炎症・黄疸・鬱血などの影響を受けるため,これらの増悪・回復に連動しTE,VTQ,SWEは容易に変化した.一方,RTEは組織の歪みを捉える装置であるが,線維化進行に伴う肝内の組織の斑さを捉えることで炎症・黄疸・鬱血などの影響を受けることなく肝線維化診断が可能であった.VTQは測定遂行率が高いこと,SWEは測定結果の正確性の客観的評価が容易であることなどそれぞれに利点がある事が分かった.状況に応じてこれらを使い分けることで,肝生検に代わるより精度の高い非侵襲的な肝線維化診断が可能であると思われた. |
索引用語 | 超音波エラストグラフィ, 肝線維化 |